第二十八章 民衆と役人

聖徳太子の十七条憲法で、現代日本人にとって大事なメッセージは、寧ろ、第四条以下にあります。

「四に曰く
 群卿百僚、礼を以って本とせよ。其れ民を治むるの本は、要 礼に在り。
上 礼なきときは 下 斉(ととの)わず、下 礼なきときは、以って必ず罪有り。是を以って、君臣礼有れば、位次乱れず。百姓礼有れば、国家自ら治まる」

(現代解釈)
役人たちは、礼を根本にしなければならない。元来人民を治める根本は、必ず礼にある。もし上の者が、礼を重んじなかったならば、下の人民もこれにならって、社会の秩序が保たれない。民衆の間に礼がなかったらならば、必ず罪悪が蔓延する。
それ故、君臣、つまり役人や上の者たちと民衆との間に礼が正しく行われておれば、下が上を軽蔑することもなく、従って世の中の秩序も正しく維持される。また人民の間にも礼が守られていれば、国家は自然に治まるものである。


第四条では、聖徳太子は「礼」の大切さを訴えている。
聖徳太子の功績の一つに「冠位十二階」の制定があります。
「冠位十二階」は推古11年(西暦603年)12月5日に制定され、翌推古12年(西暦604年)4月3日に十七条憲法が制定されたわけで、十七条憲法の中に「冠位十二階」の精神が色濃く表われているのです。
人間の徳目を六段階に分け、更に大小に二段階に分けたのが「冠位十二階」です。
大徳、大仁、大礼、大信、大義、大智。
小徳、小仁、小礼、小信、小義、小智。
公僕である役人と民衆である百姓との関係は「礼」で繋がっていなくてならないと、聖徳太子は言っているのです。
「礼」は「信」よりも「義」よりも位が高いわけで、役人と民衆との関係は信用レベルでは持たないと看破しているのです。
現代日本で、役人と国民の関係は「礼」どころか、「信」も「義」もない関係になっている。
聖徳太子はさぞかし草葉の陰で泣いていることでしょう。