第六章 どぶねずみの性根

ヨシ吉が 盗人稼業の一家を張るようになった経緯(いきさつ)がある

鬼のヘイ吉は その経緯(いきさつ)に一枚荷担していたのだ

急ぎ働きの大悪どぶねずみミノ吉を暗殺する経緯(いきさつ)だ

あの野郎! ことの始終を忘れやがったのか!

ミノ吉が死んだ経緯(いきさつ)はこうだ

どぶねずみの一家の親分ミノ吉が言った

今日の晩飯は どこから調達したか

調達係りの子ねずみヨシ吉が答えた

へい 今日は前の人間の住む家にいる猫から調達いたしやした

ミノ吉は 満足して言った

人間に飼われている猫からとは でかしたぜ

ミノ吉はヨシ吉に尋ねた

いつもは どぶのそこにある腐った晩飯ばかりなのになんで今日は特別なのだい?

猫を飼っている人間が今日はねずみの親分ミノ吉どんを特別招待のつもりで奮発したと

ミノ吉は満足して いつもの通り最初に食した

ヨシ吉は 固唾を飲んで様子を見ていた

その前で ミノ吉は 泡をふいて頓死していた

ああ いつも親分は 心地良い言葉には気をつけろと言っていなすったのに

あっしは それを忠実に守ったのに

その前で 頓死した親分が目を剥き、四つ足を上に向けて こう言っていた

おめえは偉い

そして

どぶねずみの親分の葬式が盛大に行われた

あっちこっちの親分衆のみならず子ねずみ連も参列した

ある組の子ねずみが 例の調達係りの子ねずみのヨシ吉に尋ねた

なんで お前さんの親分さんみたいな 立派なお方が死になすったのかね

ヨシ吉は 涙を流し こう答えた

日頃から 甘いことばや 食べものには気をつけろと

それで 前の家の猫が飼い主の人間からもらった特別の食い物を親分に奏上した

自分は てっきり 親分から試食しろと言われるだろうとビクビクしてたら 親分がパクッと食いついた

ある組の子ねずみが 頭をかしげて また尋ねた

どうして 親分さんは パクつきなすったのかね

ヨシ吉は 涙をあふれさせ 答えた

自分がビクビクしているので かわいそうに思って 親分自ら試食なすったので

ある組の子ねずみが感心しながら また尋ねた

ところで 親分は最後の遺言をなすったので

はい おめえは偉い と遺言を残されやした

ある組の子ねずみが またまた感心して こう言った

そりゃ ていした親分さんで うちの親分にも話さなきゃ

そこで ヨシ吉が あわてて 言った

そりゃ お前さん そんなこと言ったら いくつ命があっても 足りませんぜ

つまるとこりゃ(畢竟っやあ) どぶねずみの性根とはこういうもんでええ!

鬼のヘイ吉は苦虫を噛んだ