第二章 生来の臆病者

ガキの頃は、てておや(父親)からよく言われたものだ

臆病はよくねええよ 男の子は泣いちゃいけねえよ

ガキの頃のヨシ吉は ガキ同士のあいだでも臆病者だと笑われていた

どぶねずみのガキの汚さは想像を絶する

緑色の鼻水を垂らしながら、全身油の張った水滴はまるで土中のハイエナのようだ

臆病者のヨシ吉は綺麗好きで通っていた

綺麗好きなどぶねずみなど本末転倒だ

汚れ好きな人間など本末転倒だ

鬼のヘイ吉は規格外れの人間だ

そんな鬼のヘイ吉にヨシ吉が認められたのも どぶねずみでありながら綺麗好きであったからだ

いまではどぶねずみの世間で一端の大物になったヨシ吉だが 人間の世間で超大物のヘイ吉にはとうてい敵わない

盗人稼業から瓦版屋に稼業変えしたヨシ吉のところに 鬼のヘイ吉の使い走りのどくろのシオ吉がやってきた

ヨシ吉つぁん ごぶさたしてやす 瓦版稼業はうまくいってやすか

生来の臆病者のヨシ吉は むかしからどくろのシオ吉とは顔見知りだが 信用はしていなかった

シオ吉つぁん あんたがやって来たのは ヘイ吉さまからで・・・・

土色したシオ吉の顔が紅潮した

やべえ!兆候だ!

生来の臆病者のヨシ吉は構えた

やべえ!兆候だ!

どくろのシオ吉も構えた

おたがいさまだ!