第百八章 ヘイ吉の心情‐3‐

火付け盗賊改めの長官・ヘイ吉は 鬼のヘイ吉と怖れられた

ヘイ吉は 密偵 つまり 犬を飼っている

犬と言っても 犬ではない

盗人稼業に明け暮れる どぶねずみの動向を探る役目を 犬と言う

もとは どぶねずみ以下の境遇にいたのを 二十日ねずみまで引き上げた

金太と桃太が 鬼のヘイ吉の東西横綱の犬だ

ヘイ吉は想った

金太の野郎と 桃太の野郎は 同じ犬ながら 出自の境遇がまるで反対だ!

他人の姿は見えても 自分の姿は他人を介してしか見えない

金太は桃太の実像を映し 桃太は金太の実像を映す

ヘイ吉は 涙した