第一章 立ち上がるヨシ吉

盗人稼業から足を洗ったヨシ吉は 新しい稼業をやらなければ食っていけない
だが 世間はそう簡単に銭儲けをさせてくれない

「出来のいい子分が欲しい 盗人稼業のときの子分は やり手は根性が腐っているし まともな野郎はおとなしいし なかなか世の中ままならん」と愚痴ばかりこぼす日々だった

ある日 ヨシ吉は大店の高島屋の高島屋新七をたずねた

「やあ ヨシ吉つぁん いかがされてたんで ヘイ吉さまが心配されておられましたよ」

「昔の子分どもは みんなヘイ吉さまのところで お世話になっているんだが あっしは盗人の頭だったからいくらなんでも ヘイ吉さまのお世話にはなれませんで」

「大きな声では言えませんが そりゃ道理ですなあ しかし これからどうなさるんで」

「そこで ご主人に ひとつ相談したいことが ありやして 参った次第で」

「ヘイ吉さまのお声でよしみにさせて頂いたんですから なんなりと言っておくんなせえな」

「これから 世の中 大きく変わりそうな気配で あっしの頭がわりになっている セオ吉ってえのがおりやす そいつが 世間のすみずみのうわさ話を 瓦版が顔負けするぐらい集めるのが得意で それをネタに商売してえと言いやがるんで ひとつやらせてみてえんですが 新七さんのお力を借りてえと思いやして」

「ヨシ吉つあんがそうおっしゃるなら そのセオ吉さんを信用して ようござんしょう あたしは何をしてさしあげりゃあいいんで」

「高島屋さんで使ってやっていただけねえでしょうか」

「ようでがすが それだけで? ヨシ吉さんは どうなさるんで?」

「あっしは なんせ なんの取り得もねえもんで・・・・・」

「いやあ ヨシ吉さんはその人柄がいちばんの取り得じゃあねえですか ひとつ 高島屋を暖簾分けしてさしあげますんでセオ吉さんやらと 新しい瓦版屋でもなすっては?」

ヨシ吉のあたらしい稼業は あたらしい変わったはなしを提供する瓦版屋になった

さああ 盗人稼業から 瓦版屋に ヨシ吉の いよいよ 稼業変えだ