第九十五話 まあゆっくりしようや!

『そうだ!』
雄仁は思わず膝をポンと叩いた。
「大丈夫です。何処も悪いこところはありません」
ちょっと診断が早過ぎる。
元へ習え!
『そうだ!』
雄仁は思わず膝をポンと叩いた。
「つるつるずずずずううう!」
扇子を箸かわりに妙な音を発して食べる振りをする。
「大丈夫です。何処も悪いところはありません」
天に向かって反り返った足はお辞儀をした。
違うやないか!
はじめに間違いが生じると、収拾がつかなくなる。
こんなときは、振り出しに戻って新しいパターンに切り替えるのが一番である。
鏡湖池の向こう側に観光客が舎利殿を見て感激している。
「こちらに来るのじゃ!」
丁稚のたけしが雄仁の声帯模写をした。
「ここから、銀河泉に向かって飛び下りるのじゃ!」
「そして、鏡湖池の真ん中にある島まで一気に飛び移るのじゃ!」
観光客が叫んだ。
「飛んで、飛んで、飛んで・・・回って、回って、回るううう!」
観光客の勢いに乗った雄仁が調子に乗って言ってしまった。
その観光客は銀河泉どころか、鏡湖池にぽちゃんと落ちて、池面から顔を出して手を振っている。
『ふん!何て阿呆な奴なんだ!』
まるで地獄の黙示録だ!
切り落としたどくろを手にぶら下げてジャングルの中を歩いているカーツ大佐そのものだ。
「どくろの塩吉をどうするつもりだ!」
彼奴は、己の顔を棚にあげて、まるで人間のように振る舞って唄う。
どくろが人間らしくなったら、まるでフランケンシュタインがゲーリークーパーになったようなものだ。
鏡湖池の観光客の中から怒鳴り声が聞こえた。
「もうそれはいい!やめろ!」
あっちを叩けば、こっちから頭を出す。
こっちを叩けば、あっちから頭を出す。
推定埋蔵量は相当なものだ!
まあゆっくりしようや!