第八十九話 決行の日

『そうだ!』
雄仁は思わず膝をポンと叩いた。
今日の夢も調子よさそうだ。
雄仁は決行の日を5月5日とした。
『まだしばらくある・・・』
先伸ばしの悪い癖の台詞だ。
『その前に・・・・・・・・・』
先伸ばしの悪い癖の台詞だ。
丸太町通りを西へまっすぐ行けば、都屋のある百万遍に着く。
いつも以上にのそりのそりと歩く雄仁の目に止ったものが無数にある。
先伸ばしの悪い癖だ。
都屋の看板がもうそこに見えているにも拘らず、雄仁の視線は反対方向に向いていた。
ただその延長線にあったのが、例の源春男と出会った吉田神社だった。
『懐かしいなあ!』
先伸ばしの悪い癖の台詞だ。
源春男は、京都大学の学生であったが、橿原公威の男色の餌食になりそうになったことがある。
雄仁と同じ都屋の居候に無理やりされたが、雄仁が金閣寺の通い坊主になって修行すると言い出した機会を逃さず、難を逃れたことがあった。
あれ以来、雄仁とは違って、持ち前の意志の強さを発揮して修行した。
今では金閣寺の中でも偉い坊主になっていた。
『くそ!』
先伸ばしの悪い癖の最後の台詞だ。
公方と万世一系の大きな違いが、意志の強さだ。
やはり出自の違いが影響している。
公方の出自は万世一系の雑種系だ。
雑種は犬でも強靭だ。
人間も雑種は強靭だ。
万世一系の中にも、強靭な一系もあるにはあった。
初代神武天皇。
第十代崇神天皇。
第二十六代継体天皇。
第三十一代用明天皇の皇太子・聖徳太子。
第四十代天武天皇。
第四十五代聖武天皇。
第五十代桓武天皇。
第七十二代白河天皇。
第九十六代後醍醐天皇。
第百二十一代考明天皇。
第百二十二代明治天皇。
そして第百二十四代今上天皇だ。
「雄仁!それに比べておまんは!」
うしろの東山からおおきな怒鳴り声が聞こえた。