第八十三話 男性論

男性論は次回にします!
夢は引き続き観るものである。
人間とは実に均整の悪い生き物である。
このキーワードから始まらなければ、今度も次もない。
今度と次の違いが、江戸っ子にわからないらしい。
江戸で蜘蛛助の篭に乗ると、蜘蛛助は先ず客に訊く。
「旦那!今度は何処へ?」
客はええ格好しいの神田の江戸っ子だから、こう答える。
「次は根岸に行ってくんな!」
蜘蛛助もええ格好しいだが葛飾の江戸っ子だから、こう返事する。
「合点だ!今度は根岸だ!」
神田のええ格好しいの江戸っ子は、合点が行かない。
「何言ってやがんだい!次が根岸と言ったんだい!」
葛飾の江戸っ子は、ただの学のない江戸っ子だ。
「今度と次は何処が違うんでええい!」
神田の江戸っ子は、「したり!」とほくそ笑んだ。
「てめえ!今度と次のちげえも、わからねえのかい!ふん!」
学はないが、向こう意気だけは人一倍つええ葛飾の江戸っ子が、「ふん!」で頭に来た。
「てめえ!客だと思って黙っていりゃあ調子に乗って、糞!だと!いい加減にしやがれ!」
蜘蛛助は荒川の土手から江戸川に、篭ごと神田の江戸っ子を放り投げた。
「ぽっとん!」
「いってえ、男の話はどうなってやがるんだ!」
大慈院の人込みの中から江戸っ子弁の女が怒鳴った。
男の話は今度にいたしやす!
「男の話は次にするといったじゃねえか?」
江戸っ子の女が再び怒鳴った。
だから今度と言ったやおまへんか!