第七十九話 遂に割って入る

『よし!やるぞ!』
夢の続編を観るには、最後のキーワードを忘れないことだ。
『よし!やるぞ!』
誰が言ったのか、そんなことは問題ではない。
『よし!やるぞ!』
ただそれだけでいいのだ。
雄仁が突然叫んだ。
「またもや三回繰り返した!」
しまった!
鑑賞者が鑑賞者たる所以は、映像に振り回されないことであるのに、弱い人間はつい情が擡げて同化してしまう。
「しまった!」と叫ぶか、『しまった!』と呟けばいいところを、ただ、しまった!と心情を吐露する。
こうなると、運動の光と音(喧騒)の世界に振り回されてしまう。
映像の世界は、まさしく、運動の光と音(喧騒)の世界を顕現している。
鑑賞者のいる世界は、静止の暗闇と沈黙の世界である。
舞台を、静止の暗闇と沈黙の世界にして、鑑賞者の席を、運動の光と音(喧騒)の世界にする者が何処にいるであろうか。
映画が始まると劇場内は静止の暗闇と沈黙の世界になり、舞台のスクリーンに運動の光と音(喧騒)の世界が展開されるのである。
しまった!は、静止の暗闇と沈黙の世界の言葉である。
「しまった!」、『しまった!』は、運動の光と音(喧騒)の世界の台詞である。
言葉と台詞とはまったく性質が反対である。
雄仁と丁稚のたけしが織り成す世界は、運動の光と音(喧騒)の世界である。
お前、何を言うてんや!
それを言っちゃおしまいなのである。
丁稚のたけしが叫んだ。
「おめえさ、何をこいでるのだああ!」
雄仁が呟いた。
『おまんは、何をこいでいなさるのかええ!』
お升が久しぶりに登場した。
「あんだ!いいかげんにするだああ!」
遂にハナが復活した。
『オヒトちゃん!オヒトちゃん!オヒトちゃん!』
ハナは飽くまでこれがいい。
そして雄仁の首筋に例の稲妻が走るのだ。
「おれもながまにいれでくれええ!」
南野たけしが、ふたりの間に、遂に割って入った。