第四十三話 奇妙な獣

雄仁と丁稚のたけしがぐったり疲れて仮眠を採っていた。
「ングニャ!ングニャ!ングニャ!」
丁稚のたけしが奇妙な音を出す。
体が烏で頭が猫の何とも奇妙な獣が雄仁の前に現れた。
「ングニャ!ングニャ!ングニャ!」
またもや奇妙な音を出す。
雄仁がその獣に訊いた。
「ンッチンダア!ンッチンダア!ンッチンダア!」
雄仁は頷いた。
『そうか、丁稚のたけしだと言っているのか・・・』
奇妙な音だけだが、雄仁には聞き分けられるのである。
「ンッチッ!ンッチッ!ウウンッチッ!」
今度は丁稚のたけしが仰天した。
雄仁の姿が自分以上に奇妙な格好をしている。
「その格好はどうしだんだべえ?」
薔薇の花が体で、河童が頭になった、植物と言っていいのか、動物と言っていいのか分からない是また奇妙な獣の姿をしている。
その獣が丁稚のたけしに訊いてきた。
「お前はどうしてそんな変な姿をしているのだ?」
丁稚のたけしは真黒な羽を掻き分け笑いこけた。
「ンニャウンニャ!ンニャウンニャ!ウンニャウンニャ!」
雄仁は呟いた。
『なんだべ!あんだごそなんだべ!んだ!』
丁稚のたけしが言っていることを反芻している。
「あんだだじ、なにをすてんだあ!」
風俗店で狐軍奮闘頑張っている娘が、ふたりの様子を見て叫んだ。
「郁子さま
あなたの気持ちは痛いほど、わたしにはわかります。
だからわたしも家出をします。
あなたが心配している義幹の出自については、何も心配することは要りません。
わたしは、あなたを信じています。
義幹は、わたしの子供ではないと信じていますし、あなたの子供でもないと信じています。
だから何も心配することなど要らないのです。
義幹はお升さんが、わたしのためにわたしの子を産んでくれたのです。
だから義幹はお升さんに育ててもらうのが一番いいのです。
わたしも何ら関係のない話です。
だから、わたしも今屋には今やおれませんので家出することにします。
支離滅裂なことを書いたようですが、ここに書かれてあることは、天地神明に誓って真実であると申しあげておきます。 雄仁」
雄仁の置き手紙を読んだ雄仁は、お升を呼んだ。
「お升さん!お升さん!」
慌てふためいている様子の雄仁に気がついたお升は淡々と言った。
「雄仁さんが家出したんです!」
お升は呆れ返って雄仁に言った。
「あんだ!自分のことさ家出しだなんで、なにいってんだべ!」
烏の体と猫の頭をした丁稚のたけしが横でニヤニヤ笑ってぶつぶつ言っていた。
「ンダ!ンダ!ンダ!」