第四十一話 鳩と烏の競演

平泉駅交番所平警察官・南野たけしは、その日から今屋の住み込み丁稚となって、お升の指導の下、丁稚奉公することになった。
『一体あの警官は何者なんだろうか?』
600年の時空を超えた前世の魂をすべて把握している積もりの雄仁でも、南野たけしという新しい丁稚の前世は見抜けなかった。
お升に絡んでくる処が味噌であり糞である。
『味噌なら後光厳天皇で、その幼名の弥仁(いやひと)だ』
『それなら糞は一体・・・?』
雄仁は悩んだ。
今までのところ、自分が主人公の三つ巴戦だったが、そこに南野たけしというややこしい存在が現れ、四つ巴戦となった。
しかも、この警官あがりの丁稚が、なかなかの玉だ。
警官あがりのプライドを一切かなぐり捨てる大芝居を演じる。
「お升さあああん!ひどつたのみてええごとがあるだが、よかんべかあ?」
お升は美形がゆえに、ひどい喋りでも我慢できだ。
この丁稚は、見た目もひどいし、喋りもひどいと来たもんだ。
『こんな低劣な男に義兄弟と言われるようなことをした自分が情けない!』
雄仁は後悔した。
『この気持ちだ!』
雄仁は600年前のことを思い出した。
『死んでやる!と思ったときの気持ちだ!』
郁子が崇賢門院に変身しなければならなくなった。
「お上。そんなことを言っては、お上の風上におけないことになりますぞえ!」
郁子は深刻な表情で雄仁に言った。
郁子のそんな思いやりも理解できない雄仁は、豆鉄砲を撃たれた鳩のような目をして言った。
「クゥックゥ!クゥックゥ!クゥックゥ!」
それを今屋の屋根の上で聞いていた三羽の烏が物真似して鳴いた。
「カヮッカァ!カヮッカァ!カヮッカァ!」
鳩と烏の大競演だった。
「クゥックゥ!クゥックゥ!クゥックゥ!」
「カヮッカァ!カヮッカァ!カヮッカァ!」
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「クックルッククゥ!パロマ!」