第二十三話 桜吹雪

札幌を脱け出すことにした二人は、朝早くホテルをチェックアウトして札幌駅まで歩いていった。
雪祭りで有名な札幌公園の斜め向いにあったホテルを出た二人を蝦夷屋の手代が待ち受けていた。
「郁子お譲さん、どこへ行かれるんですか?」
ホテルのロビーを出たところを三人の手代に腕を掴まれた郁子は、無理やりタクシーに押し込まれるところだった。
「何をするんだ!」
雄仁はひとりで彼らに立ち向かっていったが、三人にひとりでは到底太刀打ちできない。
大柄の手代が、雄仁の顎めがけて拳を振りあげた。
「ガツン!」
鈍い音と共に雄仁はのけぞり返って気絶してしまった。
「てめえら、なにをしやがる!」
郁子の表情が鬼に変わった。
三人の手代たちは、郁子の鬼のような表情よりも、男勝りの口調に仰天して、言葉を失ってしまった。
雄仁を打ちのめした大柄の手代に向かって、郁子は更に毒づいた。
「てめえ、おれのいい人をこんな目にしておいて、ただではすまさねえぞ!これを見ろ!」
郁子は三人の手代に向かって片肌を脱ぐと、肩口から背中にかけて見事な桜吹雪の刺青が現れた。
一体何ごとが起こったのか、要領を得ない彼らに郁子は言った。
「どこかに消えちまいな!」
三人の手代たちはぺこぺこ頭を下げながら、その場から立ち去っていった。
気絶した雄仁に、抱き起こした郁子が言った。
「雄仁さん!大丈夫?」
何事が起こったのか、まったく気づいていない雄仁は、郁子の顔を見て安心した。
「よかった、怪我がなくて・・・」
雄仁がつくづく言うのを聞いて、郁子は微笑むのだった。