第四章 卑劣な輩

安川顧問はしきりに村木と四反田会長との会談のことを気にしていた。
村木は安川のことを余り知らなかったが、嶋武男から話はよく聞いていたので、悪い印象は持っていなかった。
返って、頼り甲斐のある爺さんという感じを持っていた。
「わしは、もう辞めていく身だからどうなってもいい。わしを踏み台にして、この会社の腐りきったところを、村木君、大手術してやってくれたまえ」
この言葉を村木は信じた。
危機管理意識にかけては、超越した能力を発揮する村木だが、情にほだされるのが彼のウィークポイントだ。
「分かりました。安川さんがこの件のリーダーになってください。僕は安川さんの言われる通りに動きます」
それから一週間が過ぎた。
安川から電話が入った。
「ああ。もしもし安川ですが。いま四反田会長に呼ばれて帰って来たところなんだ。それで君にまず報告しておこうと思って電話したんだ。四反田氏には、わしからきつく申し渡しておいた。早急に君と会うようにと言っておいたから、近々に連絡が入ると思うよ」
「分かりました。それで会って何の話をするのですか?」
「そりゃー君、本岡専務の件だよ。彼の首を切ることが第一条件だ」
何か、妙に本岡専務のことに拘る安川氏だったが、村木は了承した。
「分かりました。その線で話してみましょう」
翌日、秘書室から電話が入り、四反田会長との面談の日が決まった。
会談の前日に、関係者みんなが集まって夕食をすることになった。
その会食の中で、安川氏が嶋武男を役員にするべきだと強調しているのが、村木は妙に引っかかった。
嶋武男という男は、一面男らしさを売りものにしているが、普段の言動を見ていると、会社を食い物にしているのがやけに目に付く男だった。
何でも会社の経費で落とす。
どうやら、そういうサラリーマン人生をずっと送ってきた性癖が抜けないのだ。
それから、どうやらバブルの頃に、欲を出し大火傷をして、今は借金地獄にはまり込んでいるらしい。
「村木君。とにかく絶対に妥協しちゃあいかんよ」
言っていることが支離滅裂な感じをした村木だったが、それは翌日の四反田会長との会談の後で判明するのだったが、会食中は、みんなこれから義を通す重要な使命だと認識して気勢を上げたのだった。