第三十二章 乾記者のベスト・ソリューション

村木は、一体どこまでが今回の事故を引き起こした連中なのかを確認する必要があった。
戦う相手が判らなくては、手の打ちようがない。
「航空会社、Rescue隊、そしてその背後にいるであろうイスラエルの秘密警察モサドとCIAの連中。
パレスチナのハマスやアルカイダは先ず、無関係だろう。
それにしても、何が目的なのか。それを知るためには、乗客リストがどうしても必要だ」
村木が、独り言を呟いていると、乾記者が、例のスケルプトン頭を撫でながら、自信ありげに村木に提案した。
「日本のマスコミか外務省を利用したら如何でしょうか。日本では墜落事故が起きると、まず日本人乗客がいたかどうかを確かめるために、航空会社に問い合わせをします。そしていなかったらそこまでです。もしもいたら、外務省を突っついて、公表するのは日本人乗客だけですが、必ず乗客リストを手にいれます。それがIATAメンバーの責任です。イラン航空はIATAメンバーですよね」
「なかなか考えているな」
と思った村木は、「イラン航空は、今はIATAのメンバーに入っていることは確かだよ。それを報道関係者の特権を利用して、君が手に入れてくれるのかい?」
感心した表情をして乾に言うと、嬉しそうに、「はい、まさにわたくしこそうってつけの役目でございます。ええ」
そう言いながら、村木が何も言わないのに、すぐに行動に移そうとした。
「ちょっと待ちなよ、乾さん。先ほどRescue隊の隊長らしき男が、乗客リストは公表出来ないと言っていただろう。それでも自信あるのかい?」
自信たっぷりに、「お任せあれ!わたくしのベストソリューションをとくとご覧あれ!」と訳の分からない日本語を使う。
一時間ほどして、情けない顔をして乾記者は戻って来た。
「どうだったのですか?」
上田カメラマンが、心配して聞いた。
「ええ、100ドル損をしました」
と言って頭を掻いて、村木に頭を下げた。
「君のベストソリューションというのは、そんな程度のものかい?」
呆れて言う村木に、懲りもせずに言う。
「お任せあれ!次のソリューションを用意しております。ええ」
上田カメラマンの方が若いのに、口のフットワークは遥かに二十日ねずみの方が軽々しい。
どんな場合でも、「出来ません」、「わかりません」という発言はしない。
どうやら、これらの言葉を知らないらしい。
「ほう、君は一体どれだけのラダー・マネージメントを常に用意しているのかね?」
村木は、乾記者に聞いてみた。
「はい。わたくしは日本生まれでございまして、ラクダをマネージしたことはございません。ええ」
村木も次の声が出なかった。
「僕が、イラン航空の知人から極秘に乗客名簿を貰えるか、確認してみましょう」
ジャミールが二十日ねずみの対応に見かねて、日本語で言った。
「そうだな、取りあえず、その線で行ってみよう」
村木が言うと、「そうでございます。それが次のソリューションだと思います。ええ」
みんなは黙ってしまった。