第五章 大企業が消滅する(1)

高齢化社会と少子化社会が生み出す新しい社会
高齢化社会は古代ローマ帝国の時代にもあったし、近代社会に入ってからの西欧社会では何度も経験していますが、少子化社会は歴史上初めて登場しました。
高齢化と少子化が相俟った歴史上初めての現象が、文明社会を根底から覆す「新しい社会」を生み出す気配です。
今からおよそ60年前の第二次世界大戦後、日本社会のみならず、世界レベルで発生したベビーブーマー現象は、日本では「団塊の世代」と呼ばれています。
それから60年が経って、ベビーブーマー(団塊の世代)たちが60才を迎えようとしています。
まさに、ベビーブーマー(団塊の世代)たちが「新しい社会」の産みの親になるのです。
「新しい社会」では、近代(工業化)社会の旗手であった大企業(ビッグビジネス)が消滅するかどうかの瀬戸際に立たされるでしょう。
その鍵を握っているのがベビーブーマー(団塊の世代)たちです。

団塊の世代が日本を変える
昭和22年生まれから昭和24年生まれの人たちを「団塊の世代」と呼ばれていますが、昭和22年生まれの人が今年(平成20年)で61才になるわけですから、年齢で言えば、満59才から61才の日本人のことを「団塊の世代」とも言えるわけで、およそ800万人います。
従来の終身雇用制度では、満60才の誕生日が定年退職日ですから、今年(平成20年)でほぼ半数の「団塊の世代」が一線を退くことになり、平成22年(2010年)には、800万人の「団塊の世代」全員が一線からいなくなるわけです。

何故この時期に「団塊の世代」が誕生したのか
太平洋戦争に出征した多くの若い兵士達が終戦での復員後、結婚して生まれたのが、団塊の世代あることが一つの要因です。
更には、昭和23年まで避妊・中絶・不妊手術は日本では禁止されていましたが、昭和23年に「優生保護法」によって避妊・中絶・不妊手術が限定的に認められ、翌昭和24年には、「経済的な理由」での中絶も容認される事になりました。
その結果、爆発的な出生に歯止めがかかり、昭和25年度以降は出生率が激しく低下していったのがもう一つの要因です。
高度経済成長を担った世代という誤解
団塊の世代は、戦後の高度経済成長を担った世代と言われていますが、大きな誤解です。
戦後、つまり、昭和20年以降生まれの団塊の世代が活躍したのは、昭和30年代の高度経済成長時期ではなく、昭和48年の第1次オイルショック、つまり、昭和40年代後半以降です。
団塊の世代が実社会の表舞台に立つ昭和45年以降は、戦中派が築き上げた高度成長の遺産にあぐらをかいた時期でした。
そのため、平成3年のバブル崩壊以降、特に、「失われた10年」と呼ばれた1990年代(平成3年〜平成13年)以降、若い世代から「勝ち逃げ世代」などと揶揄されていました。

学生運動を担った世代という誤解
団塊の世代の人生は日本の戦後史と共にはじまるため、いろいろな戦後日本の出来事とオーバーラップします。
昭和40年代前半における大学生を中心にした学生運動に団塊の世代が大きく関与した事実は否めませんが、戦後の政治運動・社会運動のきっかけを築き上げたのは戦中派を中心とする前世代であり、団塊の世代の運動は、そうした先代の作った枠組みに乗っかっただけです。
当時の大学進学率は10%程度で、若者の大多数は高卒・中卒の労働者でした。
さらに、当時の大学生の大半は政治に無関心であり、学生運動に参加した若者の数は圧倒的に少なかったのです。

高齢化社会における団塊の世代
団塊の世代は、平成24年頃には年金を受給する世代となり、その後、加齢とともに、彼らは要介護者になっていきます。
つまり、
「支えられる」世代になるのです。
その影響は人数が多い分、その後の「支える」世代にとって軽視できないほど大きくなっていきます。
「支える」側から「支えられる」側。
「年金を払う」側から「受け取る」側。
に回り、日本経済にとって大きな負担になるわけです。
そのため、「失われた10年」の頃から年金問題は時限爆弾を抱えた大きな社会問題と言われ、たびたび改革案が提示され、その結果、給付額の削減と納付額の引き上げ、支給開始時期の先送りが行なわれることとなったわけです。
このため団塊の世代の中には、年金支給への不満から戦前・戦中の世代よりも損をしているという感覚があります。
また、団塊の世代以降の世代は、団塊の世代を支える負担を自分たちが背負わなくてはいけないという不満があり、世代間に大きなギャップが生じています。
特に、超就職難に直面した世代は、団塊の世代の雇用を維持するために、就職や収入の面で自分たちが犠牲にされたという意識が強く、退職金・年金が保障されている団塊の世代を批判する人たちも多いのです。

他の世代との摩擦
団塊の世代は、年功序列、終身雇用が常識だった時代を過ごしました。
年功序列、終身雇用制度は、上下関係や組織との協調性が重視され、技能継承問題や離職率の抑制などで良く機能してきました。
しかし冷戦終結後のグローバリゼーション突入で、バブル崩壊と相俟って、年功序列、終身雇用制度が衰退、離職率の急上昇を惹き起こし、若い世代の殆どは組織への帰属意識を持っておらず、年功序列、終身雇用という考えを持っていません。
従って、上下関係の意識も自然と希薄になっています。
上下関係の尊重や、協調性を要求する団塊の世代と若い世代との間に、摩擦を惹き起こす場面が多く見られ、更なる離職率の上昇という悪循環に陥っています。