Chapter 87 実世界と虚世界

わたしたちが夢を観ている時の時間の経過は、普段目が醒めている時とまったく違ったものになっていることに気がつきます。
普段、目を醒ましている時の時間の経過は、過去から未来への一方通行の流れだと、わたしたちは思っています。
これを、3本の時間の矢の中の、心理的な時間の矢と言います。
3本ですから、あと2本あるわけです。
わたしたちの宇宙は、137億年前に大爆発−ビッグバンと言います−を起こして誕生したのですが、それ以来ずっと膨張し続けており、これからもずっと膨張し続けると考えられてきたのです。つまり1本目の時間の矢の流れである、過去から未来への流れと共に、宇宙は永遠に膨張し続けるという流れが2本目の矢です。
更に、物理学の基本原理に、熱力学第一と第二の法則というのがあります。
宇宙にある熱エネルギーの総量は不変で、ただ形が変わる−位相が変わる、変位する−だけというのが第一の法則です。
また、熱エネルギーの総量は変わらないが、いったん使用したエネルギーは二度と使用できないエントロピーというエネルギーになってしまうというのが第二の法則です。
この使用前のエネルギーから使用済みのエントロピーの流れも、使用可から使用不可への一方通行であり、時間の流れ、つまり過去から未来への流れと同じであるというのが3本目の矢です。
わたしたちが存在している世界では、時間の矢の流れは、過去から未来への一方通行だと信じられてきたのです。
ところが、夢の中では、そうだとは限りません。
突然、経験したことの無いような未来の出来事が夢に現れ、今よりもずっと歳を取った自分が出て来るのです。
また自分が動物になった夢もあります。
これは過去の出来事が夢に現れているのです。
人間のDNAには、他の生物のすべての進化過程が記憶されていると言われており、母親の胎内で受精した子供の十月十日の進化過程は生物の進化過程と同じものなのですが、これなどは、まさに自分の遥か遠い過去のことが夢に出て来て、鳥になって飛んだり、魚になって泳いだりしているのです。
そうしますと、夢の中では、わたしたちの宇宙の法則である3本の時間の矢の流れとは違ったものになっていることがわかります。
わたしは、ずっと以前から、このことに疑問を抱いておりました。
しかし数年前に、宇宙に無限に存在するニュートリノという素粒子の重量を計ることに成功した結果、この3本の時間の矢の中の、宇宙は永遠に膨張し続ける一方通行と言うのが絶対ではなくなったのです。
時には、収縮する過程もあると考えられるわけです。
そうしますと、過去から未来への一方通行であると考えられていた心理的な時間の矢も逆行することが有り得るわけです。
これで、わたしの長年の疑問が解けたのです。
そして、先ず、「神はすぐ傍」で、時間というものが、わたしたちにとって一番身近にいる神だと提起したのです。
そして、この「夢の中の眠り」で、夢の中での時間の流れの違いの理由を解明してみたいと思ったのです。
わたしたちは、時間というと、現在、過去、未来の3つと思っています。
しかし、現在は時間ではないのです。
過去と未来だけが時間なのです。
普段わたしたちは、目が醒めている時は、時間に支配されています。つまり過去に戻ることはできませんし、未来に飛んで行くこともできません。現在この瞬間しか居ることができません。
しかし、愚かなわたしたちは、不可能なことであるのに、過去や未来に想いを馳せて生きている結果、せっかく行動できる唯一のこの現在という瞬間を見逃しているのです。
しかし、夢の中では、過去にも未来にも自由自在に行くことができます。
ここ数年の科学の進歩で、3本の時間の矢の流れが絶対でなくなった結果、夢の中の世界が、虚時間が時間になっている実世界ではないだろうかと思うようになりました。
そうしますと、わたしたちが現実だと思っている、普段目が醒めている実時間の世界は、虚世界ということになるのです。