Chapter 29 正夢・その正体

わたしたちが観る夢には、正夢・負夢・白昼夢があります。
悪夢は正夢のひとつであり、楽しい夢(楽夢)も正夢のひとつであると申しました。
更に、Chapter 6の、「現実との境界線」で、楽しい正夢も、嫌な正夢も、目が醒めた後、引き摺って暫らく余韻が残っているものだと説明いたしました。
更に、ここでもう一歩踏み込んでみましょう。
わたしたちが夢を観たと思うのはいつでしょう。
夢は四六時中、寝ても醒めても観ておるわけですが、普通、夢を観ていると認識するのは、目が醒めている時では勿論ありません。
また眠っている最中、ずっと認識しているのでもありません。
目を醒ます直前・直後に−厳密には、その間−観ている夢を以って、夢を観ていたと認識しているわけです。
夢は眠っている間中ずっと観ておるのですが、夢を観ていたと認識するのは目を醒ます前後の瞬間であるのです。
そして負夢の場合は、すぐに忘れてしまうのですが、正夢は醒めた後も引き摺ることは前にも説明しました。
即ち、悪夢と楽夢は正夢で、引き摺る夢であるわけです。
前章Chapter28で、不幸感覚は長く続くのに、幸福感覚は短く終わってしまうという話をしましたが、それはわたしたちひとりひとりの見方に因るものだと申しました。
悪夢が不幸感覚であって、楽夢が幸福感覚であると考えればわかりやすいと思うのです。
事実、わたしたちが不幸感覚を持っている時は悪夢を観ておるのであって、また幸福感覚を持っている時は楽夢を観ているのです。
従って、悪夢だけが長く引き摺るわけではなく、楽夢も悪夢と同じだけ引き摺るのですから、不幸感覚だけが長く続くわけではないのです。
幸福感覚も不幸感覚と同じだけ感じることができるのです。
しかし、わたしたちは不幸感覚を長く引き摺っているように錯覚して生きている。
飽くまでも錯覚です。
何故そのような錯覚をするのかと申しますと、夢を認識している時は目が醒めている時であることをよく理解するとわかります。
夢を夢だと認識した時には既に目が醒めているのです。
つまり悪夢や楽夢を観てうなされたり、歓喜したりしている時にはもう既に夢から醒める直前・直後の狭間であるのです。
こういう現象を呼び戻し現象と言います。
鞭のしなり現象は呼び戻し現象であります。鞭の柄を持っている手は打つ相手に向かっていても、鞭の先はまだ反対の方向を向いているのを呼び戻し現象というのです。
わたしたちが不幸感覚を持った時には、現実は既に幸福感覚の方向に、呼び戻し現象で変わっているのです。
また、わたしたちが幸福感覚を持った時には、現実は既に不幸感覚の方向に呼び戻し現象で変わっているのです。
つまり山の頂きに達したら下るしかないし、谷の底に達したら上るしかないのです。
そして、頂きで初めて幸福感覚を持ち、底で初めて不幸感覚を持つのです。
従って、本質的には、不幸感覚が長く感じ、幸福感覚が短く感じるはずがないのです。
ところが不幸感覚を感じるのは谷の底であってこれから上がって行かなければならないのに対し、幸福感覚を感じるのが山の頂きであるから下るだけでいい。
ひょっとしたら、転げ落ちてしまうかもしれない。
この気持ちが、わたしたちそれぞれの見方に因るのです。
本質的には、不幸感覚も幸福感覚も一枚のコインの裏表であることを知らねばなりません。