Chapter 23 無知の白昼夢

悟りを得た生き方、覚醒した人生、意識的な世界。
真摯に生きようとする人たちが目指す世界観であります。
楽な生き方、豊かな人生、自由な世界。
楽しく生きようとする人たちが目指す世界観であります。
中国に大同思想と小康思想というものがあります。
真摯な生き方をするのが大同思想の根幹で、楽しく生きようとするのが小康思想の根幹だと考えていいでしょう。
現代日本は、間違った小康思想が蔓延しているのです。
一見、小康思想は唯物的に見えますが、そうではありません。
楽な生き方とは、苦労から逃げるのではなく、苦労を苦労と取らない生き方であるのに、嫌なことから目を背ける生き方を、楽な生き方と履き違えているのが、現代日本人の考え方であるのです。
何故こういう国になってしまったのでしょうか。
以前、中国は中庸の精神の国だと申しました。バランス感覚の優れた国民性を有した国家なのです。
一方、日本は外向き志向の強い国だと申しました。世の流れに流され易い国民性を有した国家なのです。
大同思想が生まれると、それに対する小康思想も生まれるのが、バランス感覚優れた中庸の精神の国、中国の特徴なのです。決して偏らないのです。
一方、日本はと申しますと、大同か小康か、どちらかに偏ってしまうのです。流され易いのです。
そうしますと、易きに流されるのは当然小康思想であるわけです。しかも自分たちの都合のいい解釈をしてしまう癖が現代日本人にあります。
それが間違った小康思想になっている原因であると思うのです。
人間社会で起きる問題の大半は、悪意から起きるのではなく、間違った考えから起きていることを認識しなければなりません。
間違った考えから起きる出来事は、無知であるが故に一面的であります。
しかし、わたしたちが存在している世界は二元論が支配している世界ですから、必ず悪い面があれば善い面もあるのです。
悪意から起きる出来事には、必ず善意の面が潜んでいます。
しかし一面的である無知は、薄っぺらさがその特徴ですから両面性を持ち得ないのです。
両面性の欠落が偏重を生みます。
小康思想を偏重なものにしたのが、現代日本の世相であります。
戦後の高度経済成長で舞い上がったお釣を今払わされているのです。
みんなで一緒に映画を観ておると安心するのが、日本人の特徴なのです。
みんなで一緒に夢を観ていると安心なのです。
無知さ故の錯覚であります。
「世の中でいちばんみじめなことは、教養のないことである」と、福沢諭吉翁が言われたそうです。
今、わたしたち日本人にとって大切なことは、無知の白昼夢から醒めることです。