Chapter 185 知性は障害そのもの

夢とは記憶の再生であるのですが、何故記憶を再生する必要があるのでしょうか。
わたしたちは生まれた直後、いや母親の胎内で受精され新しい命が誕生した瞬間から記憶がはじまります。
しかし、憶えている記憶は個人差があっても、せいぜい7才ぐらいからのものです。
つまり嘗ての日本社会では、幼稚園児から小学校に入学する頃です。
前Chapterでお話しましたように、わたしたち人間の生まれ持っての本質つまり性格が固まるのが7才ぐらいまでですから、極端に言えば受精してから7才までの期間は動物としての人類であり、まだ人間とは言えない時期なのです。
そして動物としての人類の基本をマスターしてから人間としての勉強に入るのが7才あたりからなのです。
わたしたちの記憶には二種類のものがあります。
7才までの、本能で生きる動物としての記憶。
7才からの、知性で生きる人間としての記憶。
わたしたちが憶えている記憶というのは、知性レベルの記憶なので、7才ぐらいの頃からしか憶えていないのです。
しかし、7才あたりの頃には、わたしたちは7才以前のことをよく憶えていたのです。
受精して母親の胎内に誕生した瞬間まで憶えていたのです。
記憶が本能レベルから知性レベルに切り替わった結果、7才以前のことを思い出さなくなったのです。
本能レベルの記憶は大脳の古皮質に蓄積され、知性レベルの記憶は新皮質に蓄積されているのです。
従って、7才以前の記憶は古皮質に蓄積されているのですから、消えてしまったわけではないのです。
現に、わたしたちは本能レベルの記憶なくして生きてはゆけません。
食欲、性欲・・・は本能レベルの記憶の再生であるのです。
結局、わたしたちが追憶できるのは、知性レベルの記憶だけであるのです。
体で憶えているのは、古皮質から引き出される本能レベルの記憶。
頭で憶えているのは、新皮質から引き出される知性レベルの記憶。
しかし、わたしたちは頭で憶えている記憶しか、記憶と思っていない処に問題があるのです。
普段目が醒めている時がまさに知性レベルの記憶だけであるのに−実際には生きている限りは本能レベルの記憶も引き出されているのですが−眠ることによって意識が顕在意識レベルから無意識、潜在意識レベルに落ちると、二種類の記憶が引き出され、目が醒めている間、忘れられている本能レベルの記憶を呼び戻される。
それが眠りの中の夢となって現れるのです。
夢の内容に本能的なものが必ずある所以です。
目が醒めている時は抑圧されている本能が、眠ることによって発散されるわけで、人間の人間たる所以がここにあるのです。
しかし、わたしたちは目が醒めている間も本能行為をしないでは生きてはゆけないのですから、知性によって分裂状態に陥ったとも言えるのです。
それをカバーしているのが白昼夢であって、人間は寝ても醒めても夢を観ていると、わたしが主張する所以であります。
他の動物は白昼夢を観ることはありません。
何故なら彼らは醒めて生きているからです。
わたしたちは眠っているから白昼夢を観るのです。
人間だけが知性を持って、覚醒して生きていると思っているわたしたちですが、実は本能で生きている動物たちが覚醒しているのであって、知性で生きているわたしたちが眠っているのです。
体験がすべてであり、知性は何の役にも立たない所以もここにあるのです。