Chapter 177 夢を聞く

夢を見るのは、人間だけではなく他の生き物も夢を見ます。
夢を見るのは五感によるもので、わたしたち人間は視覚が他の感覚器官より最もよく働くものですから、目で夢を見る。
そこで、今まで「観る」という表現をしてきたわけです。
わたしたちの一番身近にいる生き物である犬を観察しますと、彼らもREM睡眠をしていることがよくわかります。
瞼をピクピクさせて寝ています。
しかし彼らの五感で最もよく働くのは視覚ではなく嗅覚なので、彼らの夢は専ら匂い中心の夢です。
もちろん彼らも視覚があるので、映像の夢も観ますが、わたしたち人間が観ているような映像中心の夢ではなく、匂い中心の夢なのです。
嗅覚が人並み以上に鋭い方がいれば、その方は匂いのある夢を観ておられると思います。
生まれつき目の不自由な方は、映像を知らないまま生きて来られたのですから、映像の夢を観ることは不可能な筈です。
視覚を使うことが出来ない分、他の五感がより鋭くなるのは当然です。
コミュニケーション機能としての言葉を最も発達させたのがわたしたち人間ですから、視覚の次に重要な五感は聴覚です。
生きていく上で最も重要なのが視覚であるのに対して、社会生活をする上で最も重要なのが聴覚なのです。
従って、目が不自由になると聴覚がより鋭くなるわけですが、それは生命エネルギーが目を通じて外部に洩れるのが一般のわたしたちと違って耳を通じて外部に洩れているからです。
そういう方も夢を見るのですが、映像で夢を観るのではなくて、音で夢を聞いておられる筈です。
夢を見るということは、蓄積された記憶の浄化作用つまり結晶化です。
わたしたちの記憶は時系列で蓄積されていると思っていますが、実はバラバラに蓄積されているのです。
現に、歳を重ねて行くと、わたしたちの記憶は正確さを欠いていきます。
若い時には、正確な時系列で覚えている記憶が、歳を重ねて行くと時系列で整理する機能が低下していきます。
記憶というのは、時系列に蓄積されているのではなくて、記憶を引き出す際に、時系列で配列させて引き出すようになっているのに、大脳機能の低下によって、時系列で配列させるソーティング機能も低下した結果であると考えられます。
夢はそれをカバーする役割を持っているのです。
生まれつき目の不自由な方は記憶を映像ではなく音を中心で覚えておられる筈ですから、夢も当然、音で聞かれている筈です。
夢の源泉である記憶は五感を通じて脳に蓄積されており、その五感の中で最もよく機能しているものを通じて表れたのが夢です。
わたしたち人間が夢を映像として観るのは、それだけ見るという五感が強いということに外ならないのです。