Chapter 17 漫画の世界

わたしたちが現実の世界と思って生きている映像の世界のメカニズムに迫ってみましょう。
映像を映すためには現像フィルムが要ります。
現像フィルムは動画であっても、静止画フィルムと同じものを何枚も何十枚も重ねたものであることはChapter16で説明しました。
結局の処、現像フィルムは静止画面しか撮れないわけですが、それは恰も四次元世界を時間要因でこま切れにした断面である三次元世界が一枚一枚の静止画面になっているようなものなのです。
従って、四次元世界のイメージは、映画一本を最初から最後まで観終えたようなものだと言えるでしょう。
たとえば、わたしの作品、「ルノーの妹」が映画になったとしましょう。
原作としては、400ページ(およそ20万文字)の中で7年間のルノーとその妹のストーリーが展開されています。
それを映画にする為に、先ず脚本を書きます。
脚本になった時点で、400ページ(20万文字)の原作が200ページ(5万文字)に縮小されました。
400ページの原作も一つの四次元世界を表わしているのですが、200ページの脚本もまた一つの四次元世界であるわけです。
更に、脚本という200ページの四次元世界を、カメラで撮影して現像フィルムにする。
この現像フィルムを編集して映写機で回し終えるのに2時間掛かるものに仕上げると、「ルノーの妹」という、原作では400ページ(20万文字)で表わされた四次元世界が2時間で表わされた一本の映画となるわけです。
400ページの原作も、200ページの脚本も、2時間の映画もすべて、きめの細かさが違うだけで「ルノーの妹」の四次元世界を表現しているのです。
現像フィルムだけでは無声なので、編集した時点でフィルムの横に音声を入れて、やっと映画館で上映できるトーキー(Talkie)−Talking Picture Filmの略−になるわけです。
しかし、音声が入ることで、一枚一枚の静止画のIDは失われます。
そして、わたしたちのIDも失います−ここで飛躍しますが、そのブリッジはみなさんそれぞれで架けてください。
しかし、これを漫画にするとどうなるでしょうか。
一枚の静止画は漫画の一コマと同じで、しかも漫画の一コマには脚本にある台詞も入っていて感情表現も挿入できる。ひょっとしたら原作の中にもある文章かもしれない。
漫画には、原作、脚本、撮影フィルムという、いろいろな四次元世界を表現する力があるのです。
漫画が子供だけではなく、大人にも受入れられているのは、それだけの理由があるのです。
難しい専門書では理解出来ないことを漫画にすると多くの人が読むのは、易しいのではなく、いろいろな切り口を表現しているからなのです。
その切り口とは、四次元世界の時間という要因なのです。
わたしたちの現実の世界も、漫画の一コマとして知覚出来れば、映像の世界よりも、よりリアルになるのです。
何故なら、漫画の一コマは静止画ですから、やはり三次元世界なのです。
三次元世界は、わたしたちにとって現実の世界としてイメージし易いのです。
しかも、台詞も入っている、感情も移入しているから、時間の流れらしきものも知覚できるのです。
まさに、漫画は四次元世界を三次元的にイメージできる最高の手段なのです。
自分の人生を漫画という静止画の現像フィルムに仕上げていくイメージを忘れないで頂きたいのです。