Chapter 157 『もうちょっとだけ・・・』

葛藤するということを忘れたわたしたち文明人。
文明人とは物質的に豊かになった人類を言うだけであって精神的には貧困になっていく人種のことを言うのでしょうか。
それは人間だけが持つ貪欲という欲望が原因だと思うのです。
他の生き物にも欲望はありますが、貪欲という欲望は持ち合わせていません。
それは自然の摂理に反していることを彼らは知っているからです。
いまでも地球の僻地に住む原始人たちは物質的には豊かではないかも知れませんが、精神的悩みはわたしたち文明人よりも遥かに少ないのは、貪欲という欲望を持っていないからです。
貪欲の原点は、『もうちょっとだけ、もう少しだけ・・・』という所謂チェーンスモーカーの心理がその奥底に潜んでいるからです。
わたしたち文明人は気がつかないうちに、多くのことでチェーンスモーカーになってしまっています。
『わたしたちはJunkie(麻薬常習者)』と申しました所以であるのですが、わたしたち文明人は貪欲という欲望に冒されたJunkieであるのです。
極端な肥満になった人。
極端に痩せた人。
彼らは貪欲という麻薬に冒されたJunkieであるのです。
何故あんなに太るまで放置していたのでしょうか。
何故あんなに痩せるまで放置していたのでしょうか。
『もうちょっとだけ、もう少しだけ・・・』がその原因であるのです。
文明社会であるわたしたちの回りを見渡せば、『もうちょっとだけ、もう少しだけ・・・』のオンパレードに気づく筈です。
聖職という言葉が死語になった社会が文明社会と言うのでしょうか、先生と呼ばれる方々が、貪欲という麻薬に一番冒されているようです。
政治家、医者、先生、宗教者・・・そして現代の化け物マスコミ。
いつの間にあんなに騒々しいマスコミになり果てたのでしょうか。
すべて貪欲という欲望に振り回された結果であります。
どうやら貪欲という欲望は、知的な人が冒されやすい病気のようです。
そう言えば、知識を蓄積するのも貪欲が為せるものであるようです。
頭ばかりに蓄積する知識は、極めて危険な麻薬なのです。
聖職という定義をもう一度見直すべきでしょう。
その前に、わたしたちひとりひとりが、貪欲という文明人だけが持つ欲望の定義をしっかりと持つことが肝要であります。
欲望が悪いのではありません。
貪欲が四苦八苦の原因であるのです。
欲望と貪欲の狭間を往き来することが葛藤ですから、葛藤はわたしたち文明人だけに与えられた必要悪(Necessary−evil)と言えるでしょう。
『もうちょっとだけ、もう少しだけ・・・(Much more、much more・・・)』
寝ても醒めても胸に囁くこの言葉から脱出することです。
そうすれば悪夢から解放されるでしょう。