第四十五章  最強軍団―9

いよいよ 武蔵と十兵衛との決戦だ

両者 真剣での立合いだ

武蔵は 二天一流 十兵衛は新陰流

武蔵から仕掛けた 

突然 脇差を十兵衛めがけて 手裏剣のように投げた武蔵それを 跳ね除けた十兵衛

その隙をぬって 武蔵は十兵衛に 本差しを 上段から打ちおろした

十兵衛は 真剣白羽取りで受け 十兵衛の刀を折った

折れた武蔵の刀先が 但馬守の目に突き刺さった

観衆がびっくりして 但馬守の方に視線をやると

そこに 武蔵の脇差が目に刺さって倒れている 家光がいた

そして 家光の左側にいた 伊豆守も 倒れていた

伊豆守の目には 手裏剣が刺さっていた

徳川幕府の要が 一瞬にして みんな片目になった瞬間だった

寛永の御前試合は 幕府にとっては 痛恨のイベントだった

それを 歴史は 語っていない

しかし そのおつりが 五代将軍 綱吉の時世に現れるとは 家康さえも想像できなかっただろう

そして 家康の思惑を 完膚なきまでに破壊したのが 八代将軍吉宗だった

ここに 徳川時代は終わりを告げた

だが その真相を知る者は 誰もいない

知っているのは日吉 黄門 新七 半蔵 十兵衛 そして武蔵の最強軍団だけだった

だが それから二百年後に 黄門の血を引く 慶喜によって 幕府は消え去る

運命をプログラムされていたのだ

武蔵は 己の力だけを 頼りに生き そして生ききった侍だった

それは 己のみの世界を 持っていたからだ 

いや知っていたからだ

だから 獣のように 己の最後を 自然の洞窟の中で 誰にも見られず全うした

その武蔵の表情には 満足感が漂っていた


−武蔵 終わり−