第三十七章  武蔵最強軍団―1

高島屋で 泊まった三人は それぞれ一人部屋を与えられた

半蔵は すぐに眠ってしまった

日吉は お通のことを考えて眠れない

武蔵は 肉布団のことで眠れない

ところがかんじんの お通がどこの部屋で寝ているのか分からない

松蔭寺と違って 高島屋はとてつもなく広い

とうとう日吉は我慢できずに 主人の新七に聞きにいった

何と お通はその新七と寝床を共にしていたのを日吉は知った

日吉は こんなことでは驚かない それが日吉の真骨頂だ

わしも 一緒の仲間にいれてくれと 新七に言うと

新七は それはお通さん次第ですと答えた

お通は それは武蔵次第だと答えた

普通は ここで あきらめるのが常人だが 日吉は逆にますます気持ちが高揚する

それが 天が日吉に天下を与えた理由だ

日吉は 武蔵の部屋に行って ことの詳細を話して 土下座して武蔵に頼んだ

武蔵は 日吉の無邪気さに怒るどころか ますます好感を持って 承知した

ふたりは 新七の部屋に行った

そこには 普通の布団の倍以上ある布団が用意されていた

新七がとなりの布団の山形屋で特別注文していたのだ

武蔵 日吉 新七 そして お通の四人が 寝床を共にする

お通は 相変わらず柔らかい体をしていた

他の連中は 歳もいろいろな ごつごつした体ばかりだ

それでも みんな お通のやわらかい体に触れる喜びを味わった

そこへ 突然 半蔵が天井から その部屋に飛び降りた

わしを仲間はずれにするつもりか と半蔵は怒った

みんな すまん すまん と謝って お通に了解を求めた

お通は 相変わらず 武蔵次第だと言う武蔵は こうなったら一緒だと 了解した

武蔵 半蔵 日吉 新七 そして お通の 五人の 相布団だ

そして 朝まで みんな一睡もせずにおきていた

ぐっすり眠っていたのは お通だけだった

今更ながらに お通の武蔵に対する想いの深さを みんな知った

みんな ひとりひとり大きな布団から抜け出して部屋を出ていった

お通の気持ちを察してのことだった

武蔵はみんなの気持ちと お通の気持ちも知って 布団の中で泣いていた

その武蔵を見て お通は武蔵を胸に抱きしめた

武蔵は 子供のように お通の胸の中で泣きじゃくるばかりであった

決して 埋まることの出来ない 男と女の深い溝

それを 埋めることの出来るのは 武蔵とお通

そして そのふたりを 心広く見ていてやれる白隠 日吉 半蔵 新七 のような

男と女を超えた 想いだけだ

こうやって 武蔵には 心強い仲間が どんどん増えていった

これも お通の内助の功だった