第二十二章  日吉と武蔵

三河で 武蔵は お通と別れた

お通は 三島の白隠のところに戻ると言う

それを聞いて安心した武蔵は 西に向かった

そして 尾張の中村を通り過ぎようとしたら 変な小僧がついてきた

知らぬ振りして 武蔵は しばらく歩いた

それでも 小僧はまだついてくる

とうとう 武蔵は 小僧に言った

小僧 わしに何か用でもあるのか

途端に 小僧は やったやったと言って 飛びあがった

何が何だか わからない武蔵に 小僧は言った

中村の 日吉という 偉い人に 根比べをして 勝ったら褒美をもらえるのだい

その日吉という人は どんな人だ と武蔵は聞いた

小僧は 将来 天下を取る人だい と答えると

武蔵は その日吉という御仁に逢いたくなった

小僧が 連れてきた所は 田畑のど真中に立つ 百姓家だった

小僧が 中に入って 日吉を連れて来た

その身なりを見た武蔵は 驚いた

なくなった 豊臣の関白様と 瓜ふたつの御仁だった

驚いた顔をしている武蔵に 日吉は あいさつした

わたしは 関白・豊臣秀吉の生まれ変わりで 日吉と申します

あの方は すでに亡くなったはずでは と武蔵は聞いた

あれは わたしの影武者です と日吉は答えた

それでは 歳が違い過ぎる と四十才の武蔵が言うと

わたしは 今 米寿の八十八才です と答える日吉の顔を見て 武蔵は驚いた

若くは 見えたが たしかによくよく見ると こまかい皺が 顔中にある

武蔵は ひょっとして と思って 日吉に尋ねてみた

その方が どうしてわたしに 用なのか

わたしと この小僧を 家来にしてほしいと 日吉は言った

何のために と武蔵が聞くと

再び天下を取り返すために 真剣に言う

武蔵は これは面白い御仁と出逢ったと思って ふたりを家来にした

これから 武蔵の天下取りの いざ出陣