第二十章  相布団の仲

武蔵は 三河の城下町に着いた 三河は 大権現様の ふるさと

宿を取った武蔵が 部屋でいると 主人がやって来た

泊り客が多くて 相部屋に願いたいと言う

武蔵は 心よく了解した

ところが 泊り客が多いのが 理由ではなかった

譜代の家来が 江戸から大挙やって来て 部屋を無理やり取ったからだ

それを聞いた武蔵は 主人に聞いた

譜代の家来なら 三河に屋敷があるのではないかと

部屋住みの連中だから 屋敷に泊まるのを 嫌がっているのです と主人が答えた

部屋住みに慣れているなら 相部屋でも 構わないではないか

彼らと相部屋になろう と武蔵は言った

主人は そんなこと恐ろしくて 言えません と言うと

武蔵は 部屋を出て 連中が 占拠した 部屋に行った

廊下から 武蔵が 言った

拙者は 宮本村の武蔵と申す 入ってもよろしいか

部屋からは 何の返事もなかったので 武蔵は 障子を開けた

そこには お通が ひとりで すわっていた

武蔵は 驚いて 廊下に立っていた

そこへ 主人がやって来て 中に入れと 武蔵を 無理やり 部屋の中に 押し入れた

お通とは 三島の松蔭寺以来だった

ここに 泊まっていることが どうして分かったのか と お通に聞いた

白隠和尚から 聞いたと言う そして 三河で 逢えと言われたと

武蔵は 内心嬉しかったが お通となら 相部屋には なれない と主人に言った

主人は そこで こう言った

武蔵様 三島での 相布団の仲では ございませんか

そんなこと お通が言ったのか と武蔵が 驚いて聞くと

いいえ わたしは ずっと以前から こうなることを 知っていた と言う

巻き物を 開いた 武蔵は 黙って主人の言うことをきいた