第二章  本物・武蔵

武蔵は 本当は坊主になりたかった

とくに 沢庵和尚の弟子になりたかった

人には 生まれたときからの宿命と運命がある

武蔵の運命の最初は 坊主になることだった

しかし 武蔵の戦う剣士という宿命の強さに 武蔵の運命が流し去られた

人の運命とは 前生からひきずり やり残したことを果たそうとする夢のこと

運命に生きるとは 一生夢の中で生きること

そこには 流されるという弱さがある

宿命に生きるとは 一生リアルの中で生きること

そこには 自己完結の強さがある

夢の中で生きると 次の生にひきずって 永遠の繰り返し

リアルに生きると 円の最終回帰の段階に入って そこには やり果てた充足感がある

武蔵は 本当にリアルな剣士だ

他に 強豪剣士は 数々あれど

本当のリアルな剣士は 武蔵だけだ

なぜなら リアルな剣士だけが リアルな坊主になれる

坊主の坊主たる所以は リアルになること 悟ること

世に坊主は 無数にいるけれど ほとんど生臭坊主ばかり

それなら 武蔵はリアルな坊主になったのと同じ

けっきょく 人の宿命と運命は 最後には一本の糸で結ばれる

それが 本当の人間の辿る道

宿命は過程で 運命はゴールだ

過程が間違えば ゴールには辿りつけない

そしたら また もとのふりだしだ

武蔵の強さは剣の強さより 宿命に生きる意志の強さだ