大蔵官僚腐敗(8)「私物国家」 広瀬隆 著 より抜粋

ここで注目しなければならないのは、国民の預貯金の金利をゼロにした最高責任者、97年現在の日銀総裁・松下康雄である。
これまで彼の過去についてはふれなかったが、この人物もまた、重大な大蔵省スキャンダルに関与していた。
それは、78年ごろから進行し、79年に表面化した日本鉄道建設公団(通称鉄建公団)の不正経理事件であり、鉄建公団総裁が辞任するという事態に発展した事件であった。
現在問題になっている官僚の接待に対して、霞ヶ関や所轄官庁の大臣たちは、“これからの綱紀粛正”を国民に訴えているが、それが意味のない言葉の遊びであることを、われわれは、この鉄建公団不正経理事件から学ぶことができる。
この事件では、運輸省の天下り組織として悪名高い鉄建公団が、新幹線などの鉄道利権に群がっていた。
彼らは、建設予算を獲得するために、大蔵官僚を赤坂の料亭などで接待づけにし、芸者を招いていかがわしいものを食べさせたあと、さすがに大蔵官僚は経理の専門家であるから、手のこんだ細工をほどこし、芸者の花代を料理代として、帳簿から消していたのである。
国家公務員のI種採用試験には、そうした簿記のつけ方が解説されているはずだ。
さらに、大蔵官僚の空出張が、予算編成時から組織ぐるみで仕組まれていた事実などが、続々と発覚した。
ところが、監督責任を問われて、“厳罰”を受けたという松下康雄が、実際にはただの戒告処分であり、官房長から事務次官への出世コースを歩んだのである。
鉄建公団で発覚した大蔵官僚の空出張は、大蔵省ぐるみの組織犯罪であり、松下康雄にとっては、監督責任という問題ではなかった。
自ら組織を率いて手を染めた税金泥棒の主犯者であった。
そのような性格の人間が、事務次官から日銀総裁となって、たった今、この金融崩壊の国家を導いているのである。
「鉄建公団総裁」は、現在のところ年収3000万円を超え、4年在籍で退職金が2600万円を超える。
わずか4年の天下り生活で、ほぼ1億5000万円を手にするポストである。それだけでも驚くが、「日銀総裁」の年収は、97年現在5133万円で、総裁の任期5年を満了すると、退職金が7470万円もらえる。
このわずか5年間で、3億3135万円になることぐらい、I種採用試験を通らなくても、電卓を使って計算できる。
普通の庶民が、宝くじで1000万円当たれば、大事件である。
多くの人は、それだけで人生が変わると言われている。
5年で3億3135万円は、やはり途方もない金額である。