大蔵官僚腐敗(4)「私物国家」 広瀬隆 著 より抜粋

日本の借金がどれだけあるか、その正確な金額を知らなければならないのは、ホワイトハウスではない。
われわれ日本の国民であろう。
ところが、大蔵省の発表では、ソロモン・ブラザースが報告した金額のわずか三分の一、ほぼ35兆円だという。
“日経”コラムが書いているように、「このような事実を突きつけられると、だれも大蔵省の発表数字(不良債権35兆円)を信じる気にはなれないだろう。実態はこの何倍ではないかと勘ぐられても仕方がない。決算を承認した監査法人の当事者能力を信じる人もいないだろう」とある通りだ。
アメリカのマーチャントバンクは、日本の不良債権額を的確に100兆円とホワイトハウスに報告してきた。
なぜ日本の金融界の借金を日本人が計算できずに、アメリカ人が正確に計算してくれるのか。
これを隠してきた経過には、経済界と大蔵官僚に大いに責任がある。
その中で、住宅金融専門会社(住専)七社の注目すべき人間関係が浮きぼりにされてくる。
興銀から日本ハウジングローン社長となった河原昇が96年6月26日に逮捕され、金融界に衝撃が走った。
とりわけ、大蔵省銀行局から国民金融公庫副総裁を経て、地銀生保住宅ローン(住専)社長となった有吉正と、大蔵省代表日銀政策委員から日本住宅金融(住専)社長となった庭山慶一郎、そして大蔵省理財局次長と防衛事務次官を経て日本ハウジングローン(住専)会長となった原徹は、いずれも大蔵省出身である。
有吉正は、かつて大蔵省銀行局を切りまわす総務課長だったが、妻・国子の叔母は、大蔵事務次官だった池田勇人の妻であった。
池田が、大蔵官僚トップから大蔵大臣、総理大臣へと登りつめてゆくあいだに、有吉本人も、造幣局長、さらに国民金融公庫の理事から副総裁となって、76年に住専一社の地銀生保住宅ローンに天下りして、社長となったのである。
彼がいた当時の銀行局には、やや遅れて、徳田博美という人物が入ってきた。さきほど紹介した問題の官僚、つまり主計局主計官から銀行局長となり、野村総研理事長となって、武富士の監査役をつとめながら、未公開株を手に入れた人物である。
先に説明した、「武富士の新社長に就任した池田正人は、第一勧銀の総会屋事件で不正融資に使われたライベックス社にいたことがある」そのライベックス社に大口融資をしていたのが、ほかならぬ、有吉正社長に率いられる住宅金融専門会社、地銀生保住宅ローンであった。
この三人の“黄金の三角関係”を見ると、大蔵省銀行局の官僚が個人資産を蓄財するための金融機関として、武富士が機能してきたことは明白である。
武富士社長の武井保雄は、93年分の高額納税者リストで、納税額が43億円を超え、わが国で第一位になったが、このような納税額のチェックをするのが、税務署に出向く大蔵官僚の仕事である。