大蔵官僚腐敗(1)「私物国家」 広瀬隆 著 より抜粋

不良債権の虚偽報告を引き起こしたメカニズムは、大蔵官僚が“監査法人”に天下りするところにある。
公認会計士と同じ機能を果たす監査法人は、特に大企業の決算をくわしく点検して、企業経営が正常におこなわれているかどうかをチェックする機関である。
しかし、ただチェックするのではなく、監査法人が出した報告書は、財務の保証として重要な“担保”となる。
したがって、住専やゼネコン、金融機関に続発してきた日本企業の倒産は、ほとんどが彼らの監査能力不足に原因があり、責任があった。
その大手監査法人に、大蔵省OBが大量に天下りしてきたのである。
80年代後半に、地価が暴騰したバブル経済にあって、日本全土の不動産会社が、高価な土地を手に入れるために、暴力団関係者をやとって地上げをおこなった。
ブルドーザーを持ち込んで人が住んでいようが、追い立てて更地をつくり、そのあとに、彼らと密着したビル建設会社が登場した。
大手ゼネコン業界と連動しながら、次々にビルをつくった建設部隊である。
それらの資金を調達したのは、大手不動産会社と大手銀行であった。
大手銀行をはじめとするすべての金融機関が、莫大な預金元本をそこに投入してゆき、時価が上昇している間は、金が金を生む狂乱時代を謳歌した。
大新聞の論説委員たちが、裏金をもらって「農地の宅地並み課税」を社説欄に書きなぐり、土地の有効利用というもっともらしい理屈をつけ、背後では、不動産業者と銀行が暴利をむさぼった。
今では、平然と口をぬぐっているが、それほど莫大な金が動いたのである。
ところが、この流れが反転し、地価暴落という91年以後の逆流に巻き込まれた。
そのため、当然のことながら彼らは、それまで利益をあげていた分だけ、すべて損失になるという地獄に転落した。
監査法人が問題になるのは、金融機関の貸し出し先がまともな担保を保有していることを確認し、チェックしなければならないところを、まったくノーチェックで財務状況を保証していたことになる。
地価であれ株価であれ、無限に上昇しないことは金融初歩の常識である。
いつしか定着した“バブル”という言葉は、シャボン玉の泡のことであり、ウォール街の大暴落では、“バルーン”つまり風船投機と言われてきた。
針のひと突きではじけ、何も残らない、という意味である。
地価上昇の反動として、過去全世界の証券取引所で何が起こり、将来に何が起こるかを、監査法人のプロが知らなかったとは言わせない。
その危機の担保が、たとえば紙屑のようなゴルフ会員権や株券であれば、この監査法人を支配してきた大蔵官僚たちが、預金元本というわれわれ全国民の金に対する背任罪に問われているのである。
日本では、監査法人の出す報告書が“経営不全”のハンコを押したものであれば、その会社は金融機関から借金ができなくなって、評判を落し、ますます経営が悪化する。
それを避けるために、会社と大蔵官僚と監査法人がグルになり、あろうことか暴力団と手を組んで、決算額に合わせて作為的な会計報告をつくりあげてきた。
しかもこのグループ作業は、あれだけの金融破綻を招きながら、誰ひとり、監査の責任を問われていない。
の責任を負わされたのは、金融機関に預金していた国民である。
97年現在まで、歴史上どこにもない、“政治家が資本主義を自負しながら金利がまったくない国家”という、海外から失笑を買う論説を国民が聞かされ、そのメカニズムに天を仰いで嘆息する状況にある。