高級官僚は責任を取ったことがない「けじめをつけろ、責任者!」 谷沢永一・日下公人 共著 より抜粋

近代社会、言いかえれば資本主義社会の根本原則は「自己責任」ということです。
だから損をするのも自分の責任、トクをするのも個人の利得。
私が損をしたからといって、その分だけ隣の家に分けてあげないかんということはない。
儲けがあれば私が全部一人でとるんです。
そのかわり私が大きな損害受けても、「誰彼さん、あなた被ってよ」とは言えない。
そういう自己責任が根本原理。
ですからおっしゃるとおり「全部が自己責任」という原則が貫徹していれば、それなりに世の中はうまくいくわけです。
ところが日本の社会では、高級官僚だけは責任をとらなくていいという不文律が、明治以来確立されているんです。
官僚といってもピンからキリまでありますけれど、いわゆるI種試験に通ったエリート。
これが本当の官僚である。
I種試験に通ったエリート官僚で、収賄とか明らかな犯罪は別としますが、職務上行った行為の結果が非常に悪かったので「その責任を取った」という例は、過去にありません。
しかし、一般的な常識では、出世が止まるぐらいなら責任を取ったうちに入りませんね。
少なくとも国民に対しての責任はとっていない。
いつも私が例を出すのは、代議士の場合です。
「あの人は変な法律を通した」という噂がひと度立てば、次の選挙で落選する。
それこそ人間ではなくなるわけです。
ものすごい厳罰が待っている。
それからあらゆる私企業の場合、これも厳罰主義でしょう。
ところがエリート官僚は、現役がいま2万人おります。
それからOBもそれくらいおりますね。
問題はここなんですが、この連中は過去にいくらさかのぼって調べても「あれは職務上の処置であった」という言いわけで、一切免罪なんです。
いまの「I種試験」は当時「高等文官試験」と言いましたが、第一回が明治20年で、今年は110年目ですから、実に一世紀を越えている。
免罪の一番原型は陸海軍です。
日露戦争以後、責任体制をなくした。
だから司馬遼太郎が「坂の上の雲」で憤慨して書いている、乃木希典将軍の参謀長の伊地知幸介。
この人物はあれだけたくさんの日本人の血を無駄に流したにもかかわらず、のちに男爵を授かっているんです。
一番近い例では、開戦の通告を遅らした外交官、寺崎英成。
この男が真珠湾攻撃のとき宣戦布告の通達を遅らせた主犯なんですよ。
そのために今まで50年以上、アメリカから徹底的に、「日本は狡い」と言われ続けてきた。
アメリカが日本に対して不信感を持つようになったのは、あの通達の時間の遅れ以来なんです。
個々のことではもともとアメリカはこうるさい国だけれども、しかし日米関係が他の国際関係と違うのは、一番根本に「日本人はフェアでない」という気持ちがあることです。
アメリカ人が一番嫌がるのはアンフェアということですからね。
だからアメリカがここ50年、日本に何を言うてきたかということを全部調べたら、基本線は一本です。
「これはアンフェア」だと。
そう言うてきてるわけですね。
その根本は通告が遅れたこと、あの一瞬にあるわけです。
ところがその寺崎英成という男は、戦後栄進して外務次官になりました。
のみならず勲一等。
いわば官僚としての位人臣(くらいじんしん)を極めている。
つまり必死に外務官僚が、お互いにかばいあったわけです。
だから日本には、一種の特別な区域があるんです。
そこに生息しておるのが合計4万人ぐらい。
これが日本の責任体制の埓外(らちがい)に、独立国としてあるわけです。
だから住専の問題はそれのいわば最後っ屁。
問題が重なり山積みしつづけてきた。
その極みなんですね。
今でも彼ら官僚は責任をとる気ないんじゃないですか。
つけ足しておきますと、例の寺崎英成の書いた「昭和天皇独白録」。
あの内容は臭いと私は前から思っているんですけどね。
その点を小室直樹さんがいちはやく指摘しました。
詳細に読んでいったら、絶対に昭和天皇はこんなことをおっしゃる筈がないと思えることがいっぱいあります。
デッチ上げじゃないかと思うのですが、少なくともあれが昭和天皇の本当の独白であるという証拠はないんです。

なんという酷い国なのでしょうか!