官僚よ、これがけじめのつけ方だ「けじめをつけろ、責任者!」 谷沢永一・日下公人 共著 より抜粋

長年この国について思っていたキーワードは、「無責任・日本」なんです。
しかし、とうとう今年は、それに、「けじめをつけてくれ、責任者は責任を取れ」という国民の声が高まることになりました。
みんなさかんに、「日本はどうあるべきか」という議論をしてはいるが、一番簡単に社会をよくする方法は、自己責任の原則を明確にすることです。
つまり責任をとればいいんです。
責任をとるなら、何をやってもいいという自由が、その人にできる。
まずそのことに気がつくべきです。
江戸時代に武士の政治がともかく250年続いたのは、切腹したからです。
切腹覚悟でなさっていることなら、ご指図を聞こうと町人が思ったんです。
失敗しても切腹しないのだったら、誰もいうことを聞くはずがない。
そんな社会はやがて壊れていくし、いまの日本がそうなっている。
いま国民が、けじめがないと思っていることの第一は、やはり住専問題です。大蔵省はどうけじめをつけるのか。
けじめをつけるスキームが国民の税金を使うというのならば、これは相当な理由と覚悟を言わなくてはいけない。
しかしもう日本国民が、はっきり「ノー」と言いはじめた。
住専問題は関係者みんなが責任のなすりあいをして、醜態の限りをさらしました。
しかし結局、大蔵省、住専、母体行、農協の罪です。
各種マスコミで大々的に報道されていますから細かい経緯はご存じの通りですが、つけ足すなら住専に預金している国民はいないので、あれは金融機関ではない。
したがって住専がつぶれても、取り付け騒動は起こらないし、損をする国民もいない。
損をするのは貸した銀行と農協の二者だけ。
その二者が、「自分の失敗だから、損していいです」と言えば、それで終わり。
1993年に大蔵省の銀行局長が、「母体行に責任を取らせるから」という意味のことを、農水省の経済局長に言った秘密文書があるから、それを貫いているわけです。
つまり大蔵省のメンツが一番大事で、そのために国民一人一万円を出せというのが税金投入案。
そして絶対見逃せないのは、設立時、住専七社のうち六社まで大蔵省のOBが社長をしている。
もともと住専は、1970年代のはじめに、個人向け住宅ローンの専門会社として出発した。
そして73年、住専は大蔵大臣の管轄に指定された。
そうなれば当然、大蔵官僚にとって絶好の天下り先です。
大蔵省は天下り利益というちっぽけなことのために、金融自由化をしないで、それどころか規制を武器にたくさんの銀行に頭取を派遣してきました。
金融自由化の究極は預金金利の自由化ですが、その前にまず金融商品の自由化がある。
これまでは驚くべき規制だらけで、いちいち大蔵省の許可が必要でした。
小さいことを言えば、タオルや石鹸やボールペンを配ってよいのは、三十周年記念と開店祝いに限る。
だから日本のカレンダー文化が世界最高になった。
日本のカレンダーが世界一美しいのは、世界一カネがかかっているから。
そのおかげで日本の印刷業はスイスを追い越して世界一になったんです。
なぜカネがかかっているかというと、申し合わせでカレンダーは一枚ものにかぎるとした。
十二枚めくるなんて贅沢だから、もっと質素でなければいけない。
その規制の中で、各銀行が美しさの追求競争をしたんです。
そういうコト細かな規制をするのが大蔵省銀行局で、その一部は銀行協会の自主的な申し合わせという形で行われた。
さて、住専になぜこんなに膨大な不良債権が発生したかというのは、報道されている通りです。
バブル期に土地が馬鹿上がりし、他方、重厚長大の大企業が銀行から借りなくなった。
そこで母体銀行が住専のテリトリーに入ってきた。
マイホームを買うサラリーマンは律義だから、クビにならない限りタバコも吸わず、酒も飲まず返済してくれる。
これはいい商売が見つかった。
そこで住専のつきあう相手は、個人向けの住宅ローンから、バクチに近い不動産投資へと変わっていった。
さらに地上げ屋が絡み、暴力団が絡んでくる。
「返さねえぞ」と居直られる。
住専の主な出資者は、母体行と呼ばれる都銀、信託、地銀、証券、生保です。
そこでマスコミに出てこない話をすれば、たとえば専務クラスが住専に社長となって行く。
よくある話なんですが、その人は「自分は頭取になるはずのエリートだった」と思っている。
それを、「追っ払われた」と感じて、「ここを大発展させて、本社より大きくしてやろう」と頑張ってしまった。
その後押しになったのが、橋本龍太郎氏が大蔵大臣をしていた1989年の地下げ宣言と、90年3月の大蔵省通達「総量規制」です。
凄いことになった。
不動産にばかり貸していたような銀行もあるし、S銀行がパチンコ屋にたくさん貸していたのは、金融関係者ならみんな知っている。
いきなり枠をはめられたから劇的に効きまして、地価がみるみる値下がりをはじめた。
大蔵省は、住専のほうでちょっと蛇口を緩めてやれと思ったかどうか、「総量規制」の対象外にしたから、各金融機関の不動産向け融資が住専にまわされたのは当たり前でしょう。
ではなぜ住専だけを、「総量規制」の対象外にしたかと言えば、それは天下りした大蔵省OBのためと言わざるをえない。
そして「もっと発展させてやれ」という下心もあったはずです。
住専が大産業になってくれれば、役員ポストへの天下り先が一挙に二十何人分とかできるわけですからね。
しかしそれが全部裏目に出た。

まったくひどい話です。