16.諸外国の韓国論

いや、そうはいっても田山正中の意見は「理想論」だ、現実はもっときびしいよ、ロシアというのは世界の大国で、なにをするかわからない専制国家なんだから、という反論も当然あるでしょう。
ロシアが朝鮮をどうしようとしていたか。ソ連邦が崩壊した後、ロシア政府の公文書の公開も進んでいると聞きます。日本の歴史学界でも、直接、ロシアの文献、第一次史料を蒐集、検討する研究者がぜひあらわれてほしいと願っています。
ロシアだけではありません。
イギリス、アメリカなどの公文書もよく検討して、『世界の中の「韓国併合」というような研究が、日本人の歴史感覚・歴史認識を豊かなものにするために、ぜひ必要だと思います。
若い研究者の活動を心から期待しています。
ここでは、既成の研究によって、「ロシアが朝鮮を乗っ取ってしまう、日露戦争は日本の防衛戦争だった、もし負けていたら、日本もロシアの植民地になっていた」
司馬遼太郎が「坂の上の雲」でくりかえし書いたことはホントなのか、を考えてみます。答えは
「否、ノー」です。
ロシアが東アジアにどういう政策をとっていたかを考える前に、国家間の国際政治というのはきわめて複雑なものだということを、私たちはもっとしっかりと認識しておく必要があると思います。政治家が市民を煽動して一定の方向に誘導しようとしたり、またマスコミが無批判にそれに追随するとき、まま、用いられる手口は、アレか、コレか、そのどっちしかない、という問題のたてかたです。
こういう手にのってしまうことは、私たちの現在の日常でもきわめて危ない傾向であることを、よくわきまえておきたいものです。(『司馬遼太郎の歴史観』より抜粋)