(その八)渦と罠の終わり

そして、終に、追憶の渦と罠の始めと終わりが交錯する瞬間(とき)がやって来た。
まさに、追憶の渦が恵美子であり、追憶の罠が藤堂頼賢である。
更に、追憶の渦の始まりが恵美子の正物質であり、追憶の渦の終わりが恵美子の反物質であった。
更に、追憶の罠の始まりが藤堂頼賢の正物質であり、追憶の罠の終わりが藤堂頼賢の反物質であった。
どうやら、反物質の世界が我々の世界のようだ。
だから、この世には、始まりがなくて、終わりがあるのだろう。
若しも、正物質の世界なら、始まりがあって、終わりがないのだから、時間も未来から現在を経由して過去へと流れるのだろう。
だから、そんな世では、死は永遠に訪れない、まさに、不死の世界ということになる。
心中する二人の人間の境地は、まさに、不死の世界への憧憬に違いない。
正物質の宇宙と反物質の宇宙が混在した世界への憧憬が心中なのである。
『藤堂はん、生きとって!』は反物質の恵美子の叫びだった。
反物質の恵美子の叫びに反物質の藤堂頼賢は感応できない。
正物質の恵美子の叫びに正物質の藤堂頼賢は感応できない。
反物質の恵美子の叫びに正物質の藤堂頼賢なら感応できる。
正物質の恵美子の叫びに反物質の藤堂頼賢なら感応できる。
そのためには、追憶の渦の始まりと追憶の罠の終わりが混在することが絶対条件になる。
そのためには、追憶の渦の終わりと追憶の罠の始まりが混在することが絶対条件になる。
『藤堂はん、生きとって!』は反物質の恵美子の叫びだった。
恵美子の叫びに感応できるのは正物質の藤堂頼賢だけであり、しかも、恵美子の誕生と藤堂頼賢の死が混在した瞬間(とき)だけである。
地球に全宇宙の中で唯一生命体が誕生した確率がゼロへの極限値であったようい、恵美子の叫びに感応できるのは正物質の藤堂頼賢だけであり、しかも、恵美子の誕生と藤堂頼賢の死が混在した瞬間(とき)が起こるのも、確率がゼロへの極限値だった。
まさに、追憶の渦と罠の終わりであった。