(その八)人類史上最大の罪

“しまった!”の合図が嘗て一度だけ発せられたことがあった。
だが、そのことに一度も気づかずに人類はここまでやってきたために、最悪の事態が目の前に迫っていた。
1968年。
人類ははじめて月に到着した。
世界は月の表面に足を踏み下ろすアームストロング船長の映像をテレビで固唾を呑んで凝視していた。
1961年。
リチャード・ニクソンを破って第35代アメリカ大統領に就任したジョン・F・ケネディーは、宇宙開発競争でソ連に大きく遅れを取っていたアメリカが世界ではじめての人類の月面到着を目差すと発表した。
しかし、志半ばにしてジョン・F・ケネディーは1963年にダラスで凶弾に倒れた。
ジョン・F・ケネディーの志を継いだ弟ロバートは1968年の大統領選挙に出馬すると発表したが、敢えなく、またしても凶弾に倒れた。
同じ年にアメリカは人類史上初の月面着陸に成功したのである。
爾来、今日に至るまで、人類は月面着陸する人間の映像を再び観たことはない。
40年以上も経っているのにである。
この40年間にどれだけ科学が進歩したであろうか。
逆に考えれば、
この40年間にいかなる科学も進歩しなかった証明とも言える。
だが、我々人類は大きな進歩を実感してきたことを記憶しているはずだ。
この信じ難い騙り事は、まさに、人類史上最大の罪である。