(その八)偶然の奇跡

リスボンに向かっていた青年が、上空からジブラルタル海峡を鳥瞰していた瞬間(とき)だった。
ポルテラ空港に着陸のための最後のアプローチをするために、機先をジブラルタル海峡上空で反転しようとしていた矢先のことだった。
『しまった!』
パリに向かっている日本人女性が、上空から津軽海峡を鳥瞰していた瞬間(とき)だった。
シベリアのツンドラ地帯に向かうため、機先を津軽海峡で西90度へ切り替えた矢先のことだった。
『しまった!』
全国津々浦々に点在する祇園という名の町は、八坂神社の数以上にある。
八坂神社は全国に2300社あり、その総本社は京都祇園にあり、以外に弥栄神社という名の下の祇園町もある。
語源は弥栄から来ており、“ヤーサカ”と呼ばれる古代アラム語であり、祇園祭りの山鉾巡行の際の掛け声“エンヤラヤー”と同じ意味の“神に栄光あれ”というヘブライ語と語源を同じにしている。
祇園とは日本全国に点在しているのである。
明治維新によって、日本の首都は京都から東京に強引に変えられてしまったが、公式には現在でも京都が首都である。
東京へ遷都の勅命がいまだ出されていないからである。
祇園という名の町が日本全国に存在するように、銀座という街並みが日本全国に存在する理由と源が同じだからだ。
これは明らかに新しい町づくりであり、その背景には、新しい国づくりの陰が見える。
日本の何もかもが明治維新以降に変わってしまったのである。
その秘密の鍵を握っている二人の青年が、その発信源に今向かっている。
偶然の重なりの中で生じた、いわゆる奇跡の中で。