(その七)余震のうねり

「恵美子はん!」
携帯電話のスピーカーから大きな声が聞こえる。
胸をどきどきさせながら、恵美子は携帯電話を耳に当てて口を開いた。
「もしもし、澄江はんどすか?」
「藤堂はんに何かあったんどすか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
先手を取った恵美子に出鼻を挫かれたのか、澄江は黙ってしまった。
澄江の沈黙が恵美子の不安感を余計募らせる。
「恵美子はん、ある程度察しがついてはるようやから、はっきり言いますえ!」
「ちょっと待っとくれやす!」
「・・・・・・・・・・・・」
「へえ、よろしおす」
恵美子は観念した。
「藤堂はん、死にはったんどすな?」
澄江が言う前に自分の方から言ってしまった。
言わずにおれなかったのだ。
聞くことができなかったのだ。
「伏見警察から最前、お父はんのところへ連絡があったんどす・・・」
「ええ!藤堂はんはまだ見つかってへんのどすか?」
「ええ」
「伏見警察が確認したって言うてはったようどす」
「澄江はんのお父はんは、どない言うてはんのどすか?」
「お父はんは、警察から電話を受けて、すぐに伏見警察に行きはったから・・・」
恵美子は微かながら希望を持った。
「うち、ほんなら今からお家へ行かせてもらっていいどすか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どないしはったんどすか?」
「『鴨川をどり』まだやってはるんどっしゃろ?」
澄江は事の次第をまるで知らなかったのだ。
「とにかく、今からすぐにそちらへ向かいます」
恵美子から電話を切って、舞台に立っている正三と倫子に視線を送りながら、その場を離れようとした。
恵美子の様子の変化を察した正三と倫子が、お互い顔を合わせながら、不安な表情に変わっていくのを、恵美子は確認した。