(その七)半端な絆

藤堂頼賢が生きていた。
『藤堂はん、生きとって!』
恵美子の強い想いが功を奏した。
内なる声の強さが、外なる声を凌駕したのである。
『しまった!』
藤堂頼賢はやはり死んでいた。
恵美子の弱い想いが罪を呈した。
外なる声の強さが、内なる声を凌駕したのである。
現実の世界とは一体何なのか?
外なる世界なのか?
内なる世界なのか?
いずれにせよ、外なる世界と内なる世界が一体となったら永遠の世界が出現することには疑う余地もない。
部分観で生きている限りは、いわゆる現実の世界であろうが、いわゆる夢の世界であろうが、すべては中途半端な逆さまの世界観に過ぎない。
自分独りだけの世界を自覚できるか、自分と他者が同じ世界にいると錯覚するか、一重に全体感か部分観かに掛かっている。
「藤堂はん!」
恵美子から声を掛けたが、返事がない。
『藤堂はん!』
恵美子から声を掛けたら、返事があった。
「しまった!」
恵美子から声を掛けたが、返事がない。
『しまった!』
恵美子から声を掛けたら、返事があった。
二つの芯がある地球に生きているから起きる現象だ。
「恵美子!やっとやな!」
藤堂頼賢から声を掛けたが、返事がない。
『恵美子!やっとやな!』
藤堂頼賢から声を掛けたら、返事があった。
まだ、二人の絆は半端だった。