(その六)救世主(メシア)

藤堂頼賢が泉涌寺で日本のルーツと人類のルーツの謎を解いていた真最中に、恵美子は七支刀と草薙の剣の関係を露にするために最後の舞台に臨もうとしていた。
人類が絶滅する機会は過去に何度もあったが、その都度、救世主が現れては、九死に一生を得てきた。
人類を絶滅に追いやるべき使命を持った終焉代理人(ターミネーター)から、人類を救ってきたのは、サラが密かに産んだ子であり、日本を救ってきたのは、天宇受女(アメノウズメ)が産んだ子である。
人類の終焉代理人(ターミネーター)から絶滅の危機を救える者だけが七支刀を持つ権利を許されている。
その理由(わけ)は、終焉代理人(ターミネーター)が過去から現在を経由して未来へと一方通行に流れる「時間」を実現させようとする役目を負っているのに対して、七支刀を持った救世主は過去・現在・未来を自由自在に往き来できる能力で終焉代理人(ターミネーター)と対決するためだ。
人類が知性を得て以来、終焉代理人(ターミネーター)と救世主(メシア)の戦いは続いてきた。
終焉代理人(ターミネーター)の陰に潜むのは、支配者という連中で、時には王と呼ばれ、時には皇帝と呼ばれ、時には天皇と呼ばれ、時には役人と呼ばれた連中だ。
救世主(メシア)の陰に隠れているのは、被支配者という連中で、時には奴隷と呼ばれ、時には民衆と呼ばれ、時には国民と呼ばれた連中だ。
イエス・キリストはまさにメノラを持った救世主(メシア)だったが十字架に架けられた。
聖徳太子もまさに七支刀を持った救世主(メシア)だったが毒殺された。
七支刀と呼ばれるのは、須佐乃男(スサノオ)が出雲で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した際に手に入れた天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)、後の草薙の剣の正体だったからである。
そして、聖徳太子の血を引いていたのが天武天皇であり南朝系天皇であり、そして・・・。
今年の「都をどり」での「日本誕生」舞踊劇はその結末を伝えようとしていたのである。
東の京(みやこ)と西の京(みやこ)は、農耕型弥生人と狩猟型縄文人を顕していたのである。
東の京(みやこ)と西の京(みやこ)は、北朝系と南朝系を顕していたのである。
東の京(みやこ)と西の京(みやこ)は、侵略民と先住民を顕していたのである。
すなわち、支配・被支配二層構造の社会の正体が侵略民と先住民の相克にあることを顕していたのである。
すなわち、差別・不条理・戦争の正体が侵略民と先住民の相克にあることを顕していたのである。
東西文化の国である日本の歴史もまた侵略民と先住民の相克にあることを顕していたのである。
同和問題は日本だけの問題ではなく、人類の根本的な問題を投げかけているのであり、アメリカのインディアンや黒人差別、中南米のインディオ差別、オーストラリアのアボリジニ差別、南アフリカのアパルトヘイト問題は、日本の部落問題と同じで侵略民と先住民の相克にあることを顕していたのである。
島崎藤村は「破戒」でそのことを言いたかったのである。