(その五)2668年の真実

第百二十六代目の天皇になるべく徳仁皇太子殿下が自分の代で退位すると表明されたと言うのだ。
紀元前660年に初代神武天皇が即位して以来、百二十五代平成天皇まで続いた日本の天皇制度を自ら廃止するというのである。
突然の発表で、天皇皇后両陛下も他の皇族にとっても晴天の霹靂の出来事だったらしい。
皇太子殿下の発表は「鴨川踊り」の開催に併せての発表であったと、自ら吐露されたのである。
歌舞練場はこのニュースでパニック状態に陥った。
マスメディアが皇太子殿下の言質の主人公である「鴨川踊り」の会場に押しかけたのは言うまでもない。
「日本誕生」の舞踊劇で、真実の歴史が明らかにされるというのが、皇太子殿下の発表の主旨であったらしい。
「春若さん!あなたが『日本誕生』の主人公・日本武尊(ヤマトタケルノミコト)を演じられるんでしょう?」
「殿下が申された真実の歴史とは一体?」
「春若さんが主人公に抜擢された理由をお聞かせください!」
立て続けに発せられる質問に恵美子はめまいがした。
鹿ヶ谷哲夫に聞かされた日本の真実の歴史に恵美子は感動したが、そのことで、日本の国が動転するなど想像もしていなかっただけに、事の問題の重大さに身体が震えた。
「『日本誕生』の舞踊劇はいつ始まるんですか?」
記者たち全員が鑑賞しようというわけである。
「鴨川をどり」が10時から12時まで催され、12時から野点が行われ、その後の1時から「日本誕生」の舞踊劇が始まることになっていた。
「2668年続いた日本の万世一系の真の歴史が公開されるんだ!」
好奇心の権化のような記者たちによって、会場は興奮の坩堝と化していった。