(その五)いい女

14才から21才の7年の間に人間は、ロマンチシズムを養っておかなければならない。
ロマンチシズムとは片思いに他ならない。
本当の恋愛は、14才から21才の7年の間にロマンチシズムを養った上でないとしてはいけない。
そうでないと、本当に人を好きになることができない。
高校生や大学生の経験はそう意味では、障害以外の何者でもない。
特に、大学生は21才からにするべきだ。
ロマンチシズムを養うべき時期に大学生になると、恋愛を経験してしまうからだ。
人を好きになる意味もわからずに恋愛ゲームに興じると、お互い相手をモノ扱いするようになる。
ゲームだから仕方ない。
14才から21才の間は、決して、恋愛をしてはいけない。
ただ、片思いするだけで、ロマンチシズムを充分養っておくことだ。
そうすれば、21才以降になった時に、自分が本当に好きな相手を見つけ出すことができる。
ロマンチシズムを養わなければならない14才から21才の時期に、早熟して恋愛経験をしてしまったら、21才になってから、自分が本当に好きな相手を認識することができず、不適切な相手と無理やり恋愛をし、親となる意味もわからずに子供をつくってしまう。
その後は、最悪の人生が待ち受けている。
兄の聡は、最悪の人生の門まであと一歩のところまで来ているのだ。
恵美子は、そういう意味では幸運だったと言える。
藤堂頼賢と出逢えたのも幸運の一つだった。
15才から舞妓の修行に明け暮れ、20才の成人式の日に藤堂頼賢と出逢えたのは、彼女に対する人生の褒美だったかもしれない。
その間にロマンチシズムを養うことができたからだ。
特に、夢の中での兄、聡との出来事が、更に、恵美子にロマンチシズムに対する渇望感を与えたのは確かだ。
高校生や大学生の間に恋愛をすることは、長い人生の中で最も醜い経験と言えるだろう。
ロマンチシズムが人の心にどれだけ潤いを与えるか、計り知れないものがある。
恵美子は実にいい女になっていたのだ。