(その十四)組織よりも強い個人

差別のある社会が、国家や会社や家族といった、いわゆる組織を形成する。
自然社会にある家族やグループは、人間がつくり上げた組織論に基づいたものではない。
まさに、国家のない社会であり、会社のない社会であり、家族のない社会が、自然社会の基本だ。
野生性の強い動物は決して家族もグループも形成しないで単独で生きる。
ライオンはグループを形成するが、虎はそうではない。
その理由は、虎の方がライオンより野生的だから。
逆に言えば、ライオンの方が虎よりも知的であるとも言える。
国家のない社会や、会社のない社会というのは人間でもイメージできるが、家族のない社会というのは想像もできない。
夫婦中心の家族あっての祖先であり、子孫であって、家族がなければ、子孫保存という動物の基本本能の発揮しようがない。
自然社会で生きるものの生活形態、つまり、生態には二種類ある。
単独生活する種類と、共同生活する種類の二つだ。
単独生活する種類といっても、母親と子供はある一定期間だけ共同生活するが、それは子供が独り立ちできない期間だけで、子供が独り立ちした暁には、母親は子供を自分からも離す。
これこそまさに種の保存本能が動物の基本本能である所以だ。
種の保存本能とは生存本能、つまり、サバイバル本能に他ならない。
言い換えれば、弱肉強食の世界が自然社会だということだ。
『食う食われる世界』だとも言えるだろう。
食うものは生き残れ、食われるものは生き残れない掟が厳然と働いている。
従って、単独生活する種類が強者で、共同生活する種類は弱者ということになる。自分を食いに来るものに単独で対決できないから共同生活をするわけだ。
人間が社会をつくる基本動機も、彼らとまったく同じ点から来ている。
百獣の王と呼ばれているライオンは今でこそアフリカのサバンナにしか棲息していないが、嘗てはインドでも住んでいた。
インドには虎も住んでいて、しょっちゅうライオンと縄張り争いをしていたが、戦えば10回中8回は虎が勝つのでライオンはとうとうインドから追い出され、アフリカでは共同生活をする種類になった。
この現象は単独生活する種類が強者で、共同生活する種類が弱者であることを示唆している。
人間社会の言葉で言えば、『組織』で生きる者よりも『個人』で生きる者の方が強いということになる。
家族を構成して生きる人間よりも、単独で生きる人間の方が強いのである。