第二十六章 産業(Industry)から商業(Merchant)へ

投機経済(マネーゲーム経済)になると、金融機関を中心にした第三次産業(サービス産業)だけではなく、第二次産業、第一次産業の製造業まで、投資経済(実体経済)を基本にした経営から、投機経済(マネーゲーム経済)を基本にした経営に変節してしまう。
1985年の日本で不動産バブル経済が発生した時、あらゆる企業がマネーゲームに狂乱したのが、いい例である。
製造業の大企業まで、マネーゲームで多くの損失を出し、株主訴訟を怖れた大企業は、マネーゲーム損失を隠そうとした。
日本の1990年代が「失われた10年」と称せられたほど、バブル経済を発生させた日本経済は大きな痛手を受けたはずだ。
だが、その後も、マネーゲームは影を潜めるどころか、ますます、規模を拡大させていった。
「失われた10年」の日本を後目に、今度はアメリカでバブル経済が発生した。
挙句の果ての、2008年の金融危機発生と、世界同時不況という、1929年の世界大恐慌の再来を招いたのである。
まさに、マネーゲームの陰は潜めるどころか、更に、増長させているのだ。
これは一体何を示唆しているのか?
マネーゲームは、金融機関業界の問題ではなく、産業全体の問題にまで拡大していて、経済構造自体が大きく変節したことを示しているのである。
まさに、
世界経済が、投資経済(実体経済)から投機経済(マネーゲーム経済)に変わってしまったのである。
製造業までが、モノづくりで利益を上げることよりも、マネーゲームで利益を上げることに腐心しだしたのである。
トヨタの「リコール問題」は、それまでの「リコール問題」の原因とは、その質において大きな違いがある。
つまり、
「モノづくり」の中で生じた製品の技術的ミスではなく、「マネーゲーム(金儲け)」の中で生じた商品の精神的ミスに他ならない。
そして、その原因は、単なる技術上の問題ではなく、企業の経営姿勢の問題にあり、その背景には、投資経済(実体経済)が投機経済(マネーゲーム)に変節した点に収斂する。
まさに、
経済の母体が、産業(Industry)から商業(Merchant)に変わってしまったのである。
平たく言えば、
本来は産業(Industry)であるメーカー(製造業)も、サービス業と同じ商業(Merchant)に成り下がってしまったのである。
今回のトヨタの「リコール問題」は、メーカー(製造業)のトヨタの問題ではなく、商業(Merchant)のトヨタの問題なのである。