第十五章 アメリカ新大統領の公約

超格差社会が現実化しているアメリカ社会で、史上初の黒人大統領が誕生した。
2008年11月4日に大統領選挙に勝利したオバマが、勝利宣言の演説の中で、“人民の人民による人民のための政治を”という、アメリカ合衆国第16代大統領アブラハム・リンカーンの言葉を引用した。
そして、2009年1月に就任したアメリカ合衆国第44代大統領バラック・オバマの支持率は80%近くまで達した。
ところがである。
それから一年が経過した2010年2月時点での支持率は40%台まで下落した。
原因は、公約を果たしていないからである。
では、オバマの公約とは一体何であったのだろうか?
一番目の公約は、年収25万ドル(2500万円)の高所得者に対する増税と、年収7.5万ドル(750万円)以下の低所得者に対する減税である。
全米の95%の世帯の税負担は軽くなるか、現状維持になるとしている。
二番目の公約は、失業対策として500億ドル(5兆円)の緊急経済対策である。
三番目の公約は、サブプライム・ローン問題が表面化した早い時期から、住宅ローン破産による差し押さえに90日のモラトリアム(支払い猶予)を提案。
住宅所有者に対する10%の広範な抵当融資をすることによって、大半が年収5万ドル(5百万円)未満の住宅所有者1000万人が1年に平均500ドル(5万円)を手にすることができるとしている。
四番目の公約は、住宅金融専門会社の監督強化。
五番目の公約は、自身が2002年にイラク戦争に反対の投票をしたことをアピールした上で、一か月に1から2旅団のペースで、16か月かけて2010年半ばまでに米軍を撤退させる。
六番目の公約は、エネルギー問題だ。
2050年までに温暖化ガスの排出量を80%削減することを主張。
クリーンエネルギーの研究開発に今後10年間で1500億ドル(15兆円)を投入。
当初反対していた米国沿岸の石油掘削は支持に転じた。
更に、10年以内に中東とベネズエラから輸入する原油を減らし、環境分野で500万人の雇用を創出する。
更に、2015年までに米国のプラグインハイブリッドカーを100万台にする。
七番目の公約は、医療保険問題だ。
先ず、全ての米国民が保険でカバーされることを目指し、基本的に任意加入だが、子供の保険加入を親に義務づける。
更に、保険会社に既往症のある人の保険加入を認めるよう促し、零細企業が全従業員を保険に加入させられるよう税の還付を行う。
そして、
八番目の公約は、外交問題だ。
イランは中東と米国に対する深刻な脅威であるとの認識のもと、条件なしでイランと実務者レベルの交渉から始めることを支持。
核開発とテロ支援の放棄と引き替えに、世界貿易機関の加盟支持や、イランへの投資の促進、国交正常化などを行う。
中東とイスラエル問題では、基本的にイスラエルを支持する。
ハマスとヒズボラがテロを続け、イスラエルの生存権を認めなければ、両武装組織の孤立を図る。
だが、中東和平の妨げになるとしてパレスチナ自治区へのユダヤ人入植を批判し、パレスチナの穏健派を支援する政策を支持する。
ロシア問題では、ロシアの「グルジア侵攻」を強く非難し、ロシア政府には引き続き透明性と民主主義を求める。
ロシアが周辺地域への影響力復活を狙っている状況に対応する。
移民政策において、国境管理を強化する一方で、米国で暮らしている1200万人の不法移民を一定の条件のもとで合法化する。
そして最後に、貿易問題の論及。
北米自由貿易協定(North American Free Trade Agreement = NAFTA)に批判的で、再交渉するとしている。
「自由貿易」協定には労働者と環境の保護規定を盛り込むことが必要だと主張する。

以上がアメリカ新大統領の公約だが、アメリカ国民からの支持率の低下(半減)は、オバマの公約の可能性を否定的に捉えた結果である。
すなわち、
公約の可能性を肯定的に捉えた結果が80%近い支持率であり、公約の可能性を否定的に捉えた結果が40%まで下落した原因だ。
では、オバマは出来もしない嘘をついたのだろうか?
アメリカ国民は、この時こそ冷静に判断をしなければならない。