第七十三章 死を知る重み

知性とは大脳新皮質の発生によって齎された。
それまで死の観念しかなかった人類が、死の概念を持つに至ったのは大脳新皮質の誕生に因るわけです。
つまり、知性の誕生と死の概念とは密接な関係にあるのです。
“人間は考える葦である”
知性とは考える能力に他ならない。
従って、
人間が考えるという所以は、すべて死の概念が基にあるからです。
“オスが好くてメスが悪い”
“善が好くて悪が悪い”
“強が好くて弱が悪い”
“賢が好くて愚が悪い”
“富が好くて貧が悪い”
“幸福が好くて不幸が悪い”
“天国が好くて地獄が悪い”
“健康が好くて病気が悪い”
“神が好くて悪魔が悪い”
“支配者が好くて被支配者が悪い”
と考えるのは、すべて“生が好くて死が悪い”と考えることが基になっている。
更に、“自分もいつか必ず死ぬ”という究極の錯覚に陥った。
知性のある人間だけが、悩みや苦、そして、死の恐怖に苛まれる人生を送る羽目に陥った所以であります。
死を知るという重みを自覚することが人間の人間たる所以なのです。