第八十二章 開放型自由社会主義―社会モデル(2)

人口のバランスの取れた社会

世界の人口は、過去二百年間に亘って爆発的な増加を続けています。
それは下記の推移を見れば、一目瞭然です。

1800年  10億人
1900年  16億人
2000年  60億人
2050年  93億人(国連予測)
因みに、紀元前後から紀元15世紀の1500年間の人口推移は3億人から4億3千万人と1億3千万人しか増加しておらず、近代に入った1600年代から1800年代でも各世紀1億人程度しか増えていません。
特に20世紀になってからの増加の度合いが著しい。
地球という人類の生活圏が限られたスペースである以上、やがて資源や食糧の供給能力が人口増加に追いつかず、このままでは文明社会が破綻するのは必然です。
日本のような食糧自給率の低い国から崩壊が始まることも明らかです。
人口抑制策を講ずることが緊急の課題なのです。
しかしながら、人為的に人口を抑制するのは非常に困難なことでもあります。
人口が爆発的に増加している地域はアフリカを始めとする後進国です。
逆に先進国では人口が減少傾向にあります。
後進国の人々は日々の生活が苦しいにも関わらず、何故さらに子供を産むのでしょうか。
これは理屈の問題ではなく、人間の本能的な欲求に根ざしたものであるという事実を指し示しています。
人間の平均寿命が80才まで伸びた日本のような先進国の一方で、平均寿命が30才にも満たない後進国が山とあります。
人口が増えている国の平均寿命が低く、人口が減っている国の平均寿命が高いという現象であります。
エイズや飢餓が原因で平均寿命が30才にも満たないアフリカの国で爆発的な人口急増現象が見られるわけです。
一見、逆現象のようです。
豊かな衣食住と医療の発達で平均寿命が伸びているなら人口も増えていい筈なのに人口が減っている先進国。
貧しい衣食住と医療の不足で平均寿命が縮んでいるなら人口も減っていい筈なのに人口が増えている後進国。
この逆現象を一体どう捉えたらいいのか。
先進国では、
余るほどの衣食住環境を持つ両親が世襲・相続できるのに何故子供を生まないのか。
余るほどの医療環境を持つ両親が病気の心配の無いのに何故子供を生まないのか。
後進国では、
エイズになっている両親が遺伝するのに何故子供を生むのか。
飢餓で苦しんでいる両親が食物を与えられないのに何故子供を生むのか。
一見、理解に苦しむ現象であるわけです。
わたしたち人間だけが有する知性では理解できない現象が起きているからです。
知性では到底理解できない現象とは、自然の食物連鎖の法則に因るものです。
知性に基づく科学ですべてを解決しようとする人間社会ですが、現実はそういう風には行かないことをこの現象は示唆しているのです。
知性を有しているわたしたち人間だけが、“生が好くて死が悪い”という好いとこ取りの相対一元論の「考え方」で生きているからです。
知性を有していない他の生き物は、“生も死もない”という絶対一元論の「在り方」で生きているからです。
「考え方」と「在り方」二元が分裂する人間。
「在り方」一如の他の生き物。
「在り方」が「考え方」を打ち負かすのは明白です。
一見、逆現象に見える理由の所以がここにあるのです。
科学の力で平均寿命を80才まで伸ばした人間もいますが、自然の食物連鎖の法則で平均寿命が30才にも満たないようにされた人間もいて、結果的には依然人口が爆発的増加をしているのですから、自然の食物連鎖の法則は厳しい反応をこれからも人間にしてくる筈です。
人口が減少している先進国にとって、人口が急増しているのは後進国であって、自分たちの責任ではないと思っているでしょうが、それは大きな間違いであります。
数の少ない先進国が、数の多い後進国から搾取してきた結果であります。
近代社会になって人口が急増したのであって、近代社会以前の後進国では人口は急増などしていなかった。
欧米列強帝国主義が植民地政策を採って後進国から搾取しだした結果、自己防衛本能の一環として人口が増えだしたのです。
これは明らかに自然の食物連鎖の法則の為せる業であります。
シマウマを食べるライオンが、今日の糧だけでなく、明日の糧も見込んでシマウマを大量に殺すようになると、シマウマは本能的に絶滅を怖れて大量の子供を生むようになる。
食う側(支配者側)が余計な食う量を増やすと、食われる側(被支配者側)は余計な食われる量を増やす。
それが自然の食物連鎖の法則であり、延いては、食う側(支配者側)も、食われる側(被支配者側)も、自然の食物連鎖の法則を破った罰として絶滅させられるのです。
従って、他の生き物の自然の社会では、決して余計な食う量を増やすことはしません。
今日の糧だけで満足するのです。
人間社会だけが、今日の糧だけで満足せず、明日の糧まで溜め込もうとする。
その結果、支配・被支配二層構造社会を形成してしまい、オス社会を形成してしまい、世襲・相続の差別制度まで形成してしまい、挙句の果てに、差別・不条理・戦争の横行する社会にまで行き着いてしまったのです。
この悪循環はピークにまで達しています。
従って、あとを待ち受けているのは、自然の食物連鎖の法則の厳しい対応による絶滅の事態であります。
現に、カエルといった両生類は絶滅の危機に陥っており、世界の珊瑚も海温があと4℃上がると絶滅すると言われ、哺乳類の北極熊や鯨も絶滅の危機に直面しています。
更に、人間社会が引き起こした地球温暖化現象によって、過去30年間に地球上の動物の30%が絶滅し、地球上の30%以上の水分を供給しているアマゾン川の森林が伐採され砂漠化への道を歩んでいる。
これらの現象はすべて人間の為せる業であり、後進国において平均寿命がますます低くなる一方で人口が急増しているのと呼応しており、これらの現象の元凶は、先進国が自分たちの欲望のために搾取を続けていることにあるのです。
近代に入って人口が急増しはじめた原因であります。
今日の糧だけで満足せず、明日の糧まで追い求めるのが原因であります。
拝金主義とは、今日の糧だけに満足せず、明日の糧、明後日の糧、・・・、死ぬまでの糧を追い求めることであり、超拝金主義とは、今日の糧だけに満足せず、明日の糧、明後日の糧、・・・、死ぬまでの糧、更には、死んだ後までの糧を追い求めることに他なりません。
この悪循環現象を食い止めるには、人類全体が衣食住の心配がない社会を早急に構築するしかないのです。