第四十章 新しいイデオロギーの構築(1)

二元論的発想

二十世紀に大きな悲劇を齎した要因は、資本主義思想と共産主義思想の対立にあり、さらに遡れば自由主義思想と啓蒙主義思想の対立があり、さらにその背景には経験論と合理論という各々異なるベースがあることは繰り返し申し上げてきました。
両思想はこれまで何故互いを憎み、血で血を洗うような争いを繰り返さねばならなかったのでしょうか。
「前世紀までのイデオロギー」で申し上げましたが、自らの考え方が唯一正しいものと信じて他者を激しく攻撃する、すなわち自分が善で相手が悪と判断する、そして敵・味方と区分けして争いを始める、そういった性質が我々人類にあることは残念ながら事実です。
このように自他の区別を設けて、物事が二者択一的にどちらの側にあるかを論ずる発想を二元論的発想と言います。
我々の生きている世界は、この二元論的発想に基づいて動いていると言っても過言ではありません。
先行する自由主義思想・資本主義思想への反動として啓蒙主義思想・共産主義思想が生まれた。
先行する思想がその対立軸を産み出した、つまり根っこの部分では繋がっていると言い換えてよいでしょう。
すなわち、従来のイデオロギーという概念も二元論的発想を基にしたものであり、産業革命によって近代工業化社会になった結果、資本主義思想が誕生し、その二律背反要因である共産主義思想も必然的に生まれたものです。
自由主義思想と啓蒙主義思想、経験論と合理論の発生も同様の経緯を辿っています。
二元論的発想によって、一見激しい対立関係にあると思われるものが、実は、お互い絶対に相容れない関係ではなくて、裏返しの関係にあるということ、更には自他という言葉が正に象徴するように、相手があってこその自分であり、対立しつつも互いに相手の存在を必要とするという必然性を有する。
これは非常に重要な点です。
イラク戦争もまたキリスト教圏世界とイスラム教圏世界という二元論的発想に拠る対立の構図が基にありますが、歴史を遡れば、イスラム教とキリスト教は旧約聖書をバイブルにした兄弟宗教であり、いわば骨肉の争いであるという点に焦点をあてれば、資本主義思想と共産主義思想の対立構造と同質であるのです。