第三十七章 悲劇と発展の二十世紀(6)

思想間の対立の背景(1)

思想対立の解消を考察するにあたって、人類の思想形成における変遷の歴史を振り返ってみましょう。
原始社会の人類に在ったのは、太陽や火を対象とする信仰でした。
未だ自然や動物が人間にとって強敵であった時代、そうした外敵から自らを守ってくれる力を持つものを無邪気に崇めていた訳です。
その後人類は自然を凌駕するに至って、古代社会へと移行していきます。
その際の信仰の意味合いが従来とは完全に異なることになります。
自然という外敵から身を守るための方便であった信仰が、一部の支配者が多数の被支配者を支配するための方便へと成り変わったのです。
被支配者とは奴隷のことであり、奴隷制社会を維持するための方策として、信仰は機能することになります。
やがて、奴隷制社会の進行に連れて、被支配者である奴隷の救いを求める意識が高まり、悲惨な現状から自分たちを解放してくれる救世主の出現を待望するようになります。
そこに現れたのがイエス・キリストです。
彼の教えは、現世の束縛からの解放の代わりに、心の自由・幸福を得て、精神的な開放を目指すものでした。
この教えは当時の社会のニーズにマッチして、キリスト教は急速に拡大することになります。
やがてキリスト教はローマ帝国の国教となるに至り、時代は古代から中世へと移行します。