第三十四章 悲劇と発展の二十世紀(3)

二十世紀の紛争(3)

大量破壊兵器を人間が実際に使用しない限り犠牲者は発生しません。
しかし一方で、人類が人類全体を容易に滅ぼす技術を手に入れたことも事実です。
この殺傷能力の飛躍的な高まりは、皮肉なことに全面戦争に対する抑止力として機能します。
人類滅亡につながりかねない核兵器の使用を恐れ、結果として四十年以上にもわたる冷戦状態が継続しました。
冷戦とは、米ソを筆頭とする二大勢力、資本主義・社会主義陣営間の対立構造の下、直接全面戦争をする代わりに、局地的な代理戦争と膨大な軍拡競争を繰り広げた状態です。
半世紀にわたる争いの結果、とりあえず社会主義陣営の自滅という形で冷戦は終了しましたが、真の勝者は存在せず、その証拠に、現実にはイラク戦争の真っ只中にあるように、新たな対立関係が発生しています。
また資本主義が生き残る過程において、営利第一主義、巨大工業化、過密大都市化、ひいては人間性の疎外、環境破壊、衆愚化、家族共同体の破壊などの問題点も多数発生しました。
暮らしが良くなった一方で、人間性が貧相になり、感性の劣化、倫理観の欠落など、人間が自らの精神構造に刻み込んだ悪影響は、枚挙に暇がありません。
こうした二十世紀に起こった悲劇の原因を紐解くに当たって、従来のイデオロギー、及びそのベースとなる近代哲学に焦点を当てて行くことにします。