第二十九章 哲学より生まれた資本主義・社会主義(3)

哲学から経済学へ(1)

産業革命は18世紀の後半にイギリスで起こりました。
その牽引役を果たしたのは、ジェームズ・ワットにより発明された蒸気機関です。
この発明によって、特に紡績業において圧倒的なコスト削減が実現し、ひいては機械工業全体が飛躍的な発展を遂げた訳です。
イギリスでこうした画期的な発明が起こった背景には、16世紀末から始まるフランシス・ベーコン以来の経験論哲学があります。
この学問が持つ経験の重視・実験性という性格が、ワットのような市井の研究者を育む下地を作ったわけです。
産業革命によって生まれた資本主義経済は経験論哲学の賜物であります。
一方社会主義は啓蒙主義運動をベースとしている、とこれまで繰り返し申し上げてきました。
啓蒙主義運動の根本的な目的は、経済競争に立ち遅れた国々が先行する国(イギリス)に追いつくため、より効率的かつ短期間に成果を上げるためでした。
しかし、短期間に多くの成果をあげるということは相当の準備が必要です。
言い換えれば、啓蒙主義運動の起こった国々にはそれを可能とする土壌があったと見るべきでしょう。
その土壌が合理論だったのです。
理性やそれに基づく知識で以って諸問題を解決して行こうというスタイルは、正に啓蒙主義運動に合致します。